財務省「2トップ」不在、国会混迷の異常事態 最強官庁の解体論も飛び交い政権危機深まる

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セクハラ疑惑の最中に、森友問題で大阪地検が佐川氏から任意で事情聴取したとの情報も注目された。財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書を改ざんした問題で、大阪地検特捜部が改ざんの経緯や目的、誰の指示だったかなどについて当時の理財局長だった佐川氏に説明を求めたとみられるからだ。佐川氏ら当時の関係者に対しては、虚偽有印公文書作成や公文書変造などの容疑で市民団体などが告発し、大阪地検特捜部が捜査を続けている。

これまでの特捜部の捜査では、複数の財務省職員が「本省の指示」などと説明したとされ、佐川氏の改ざんへの関与を認めたと一部で報道された。佐川氏は3月の証人喚問で、改ざんの経緯や認識について「刑事訴追の恐れがある」と証言拒否を繰り返したが、特捜部が改ざん事件などを「財務省ぐるみの犯罪」と認定すれば、財務省はさらに窮地に陥るうえ、安倍政権への影響も甚大だ。麻生氏の辞任は不可避となり、首相の退陣論も高まりかねない。このため永田町は、「敵味方は入り乱れての、与野党とメデイアの遭遇戦」(自民幹部)のまま、大型連休を迎えることになる。

首相や財務省に「巧詐不如拙誠」の警句も

日米首脳会談のための訪米から帰国した翌日の21日午前、昭恵夫人とともに新宿御苑での首相主催「桜を観る会」に出席、あいさつした首相は、まず「現在、国民の皆様の行政に対する信頼を揺るがす事態となっている。行政の責任者として、その責任を痛感している。改めておわびを申し上げたい。この上はしっかりと徹底的に調査をし、全容を明らかにして膿(うみ)を出しきって、そして組織を立て直していく」と語ったが、招待客には「予想外に元気なのが不思議」との驚きが広がったという。

首相はあいさつの最後に『葉桜の 賑わいありて 盃(はい)重ね』との句を披露し「これからも、日本がもっともっと元気になるように、誇りある国になるように、全力を尽くしてまいります」と笑顔で締めくくった。しかし、永田町では「首相の笑顔は弱気の裏返し」(自民長老)と揶揄する向きもある。

財務省の不祥事への対応について、自民党ベテラン議員の中谷元・元防衛相は、22日放映の民放テレビ番組で「巧詐不如拙誠(巧詐<こうさ>は拙誠<せっせい>に如かず)」と中国古典の名句を引用した。「巧みにいつわりごまかすのは、つたなくても誠意があるのには及ばない」との意味で、法律を熟知したエリート集団の巧みな言い逃れへの厳しい批判だ。そしてこの名句は首相の政権運営への戒めともみえる。いま多くの国民が求めているのは「巧詐」ではなく「拙誠」であることは間違いないからだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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