「首相側近幹部」への権限集中が諸悪の根源だ 内閣人事局の「課題」と「処方箋」<後編>

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国会議事堂と霞が関の官庁街(写真:Katsuya Noguchi / PIXTA)

前編では内閣人事局の設立経緯について詳述してきた。後編では「内閣人事局の何が問題なのか」について考えると同時に、改善策について論じていきたい。

まず断っておきたいのだが、筆者は「幹部公務員は省益ではなく国益を実現すべく働くべきである」という命題には何の異論もない。しかし、現行の制度にはいくつかの点で問題があると考えている。それを順番に整理してみたい。

官僚にとって人事権は最大のパワーソース

当たり前じゃないかと思われるかもしれない。しかし、官民の両方で人事をする立場を経験すると、官の人事権は民以上に強力なパワーになると痛感した。

民間では(この場合は上場企業レベルの民間企業という意味だが)、どうのこうの言いながらも最後は「数値」という客観指標から逃げることはできない。売り上げと利益を急伸させたマネージャーや常に高視聴率をたたき出す番組プロデューサーは、たとえ、上司がどう思おうと、それなりの処遇を与えざるをえないだろう。逆に、非常に人望があって可愛がっている部下であっても、売り上げを30%ダウンさせ黒字部門を赤字化させてしまった人物を昇格させることは難しい。

つまり、民間企業の活動はさまざまな意味で数値化されてパフォーマンスが測定できるようになっており、いかに権力者といえども、これを無視して人事を進めるのは難しいのである。

最近で言えばセブン&アイ・ホールディングスの絶対権力者であった鈴木敏文会長ですら、一定の業績を上げていた社長を交代させるという人事案が否決され、会長の座を降りるしかなかったということは好例であろう。

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