「首相側近幹部」への権限集中が諸悪の根源だ 内閣人事局の「課題」と「処方箋」<後編>

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過去に任期満了で総理総裁を退任したのは中曽根康弘氏と小泉純一郎氏の2人しかいなかったのである。国際畑では、リーダーのポストの在職期間が大きくものを言う。

筆者も通商畑の仕事が長かったので、サミットに行くたびに首脳の集合写真の端のほうに小さく映るわがリーダーの姿に情けない思いをし、中曽根総理や小泉総理が議長国のリーダーの隣に立つ記念写真を見て、内心誇らしい気持ちになったのを思い出す。

そして首相が頻繁に「交代するだけでなく、各省の大臣はそれ以上にコロコロ変わる。大臣は、各省庁の最終人事権者である。これでは政治が官僚に人事的な影響力を及ぼそうにも、不可能である。

長期政権では弊害が露呈

ところが、現在の第2次安倍晋三内閣は今年で6年目に入り、さらに自民党総裁としての3選も話題に上っている。そしてこれを支える菅義偉官房長官、杉田和博官房副長官も同じく6年目である。さらに言えば、最近なにかと辣腕ぶりが報道される今井尚哉政務担当秘書官も同様である。

各省の幹部官僚は、通常同一ポストの在任は長くて2年である。他方、これを統括する側の官邸の主要人物は、すべて就任6年目を迎える大ベテランばかりである。そうなると各省に対する官邸の影響力が強まるのは、必然とも言えよう。何せ、彼らは毎年持ってこられる各省庁の人事案を何回も検討してきているのである。

その中にはかつて一緒に仕事をした人も入っているだろうし、逆に全然知らない人物が要職の候補者になっていることもあるだろう。官邸幹部といえども人間である。自分の意に添わぬ人間よりも、自分と波長の合う人間、自分の政策を忠実に実現してくれる人間を高く評価するだろう。これは、官民問わず一般的に発生する現象であって、別に人事において「ひいき」をしていなくても、人事権者の心中で評価の高い人材が厚遇されるのは、当然といえば当然なのである。

しかし、はたしてこれが正しい仕組みなのかどうかは議論の余地がある。たとえば、現在の自民党政権下で、無私無欲で必死に働き、政権から与えられたミッションを忠実にこなして多大な成果を上げた官僚がいたとする。その人は、まさに「官吏」として最高の仕事をしたわけである。しかし、次の選挙で与党が倒れてしまったとする(今の状況では起こりそうにない仮定だが、制度設計においては十分考慮すべき仮定である)。そうするとこの「最高の仕事をした官僚」は次期政権においては、「自分たちの反対する政策を実現させた最悪の戦犯」になってしまうかもしれない。

その時に、この官僚の人事はどう扱われるべきなのだろうか。

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