「首相側近幹部」への権限集中が諸悪の根源だ 内閣人事局の「課題」と「処方箋」<後編>
アメリカのように「政治任用=Political Appointee」の仕組みが出来上がっている国は良い。もともと各省庁の上級幹部で政治任用されるポストは決まっており、そこに任用される人たちは、自分の任期は、その政権の寿命の間だけと認識したうえでポストを受諾しているし、任期を終えた後の仕事もいろいろ選択可能である。
しかし、「天下り根絶」が叫ばれ、民間企業への再就職もさまざまな形で制限されている日本の状況下では、官僚を辞めてほかに職を探します……というのも容易ではない。仮に政治任用的に上級幹部を扱うのであれば、任用期間が終了した後の職業選択の道も開いておかなければ、明らかに機能不全な仕組みが出来上がってしまうだろう。
今の仕組みをどう改善すればいいのか
ここまで述べてきたように、今の霞が関の幹部人事の仕組みは、否応なしに内閣=官邸の意向が強く反映されるようになっている。しかし、これを「安倍内閣のせいだ」とか「安倍一強政治が悪い」というのは間違いだろう。そもそも、公務員人事に内閣の影響力を強めようというのは、民主党政権下でも強力に推進されていた政策であるし、国民世論もこれを支持してきたはずである。ただ、同時に今の仕組みに多くの足らざるところがあることも事実である。
筆者自身も十分に検討したわけではないので、本稿において、その改善の仕組みを子細に述べることはできないが、それでもいくつか思いつく改善策はあるので、それを列挙してみたい。
まずは内閣人事局長の任期を長くするべきではない。かつ、現在の杉田局長(事務担当内閣官房副長官)のように、各省庁の幹部の職責や候補人材の人となりをある程度熟知している官僚出身者を充てることが望ましい。
各省庁の幹部と同様、2年か長くても3年程度にすべきであろう。これによって、官僚が過剰に官邸の意向を気にするような事態は、ある程度緩和されるし、また、過度の権限集中も少しは弱められるのではないか。
現在のように官邸幹部の主観的人事によって、過剰な省益追求を排するのではなく、明確化したルールによって、各省庁が国益追及型の人事ができるように考えるべきである。具体的には、たとえば各省庁の課長職以上の4分の1、部長・審議官の3分の1、そして局長以上の2分の1は他省庁採用者から任用するといったルールを定めれば良い。そうすれば、自省庁の省益をいくら追及しても、その人が次にどの役所で幹部になるのかわからない訳だから、天下り問題を含め、過度の省益追求にはブレーキがかかる。
内閣人事局長以外の官邸の幹部職についても、長期化は望ましくない。特に政治家ではなく事務方の幹部職については、あまり長く特定の職位についているのは望ましくない。
繰り返しになるが、結果が数字で客観的に出にくい官僚の世界では、一定のポストに長く特定の人が留まることは、過剰な権限の集中をもたらしやすい。だからこそ、政府の中での特定ポストは、在職最長3年で異動という内規が定められている。それが、政府の中でも中枢になる内閣、首相近辺の職である官房副長官や首相秘書官、その他の枢要ポストに長い期間特定の官僚が留まれば、その影響力が半端なものではないことは容易に想像がつくためである。
内閣に一定の人事権能を持たせて、霞が関の各省が過度に省益追求に走らないようにするという発想自体は悪くないし、これを否定するべきではない。ただ、現状の仕組みが多くの問題点を内包していることも事実であり、これを「少しずつ改善して望ましい姿に近づけていく」というのが、今求められるアプローチではないだろうか。
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