日本人の「ノーベル賞」受賞者が激減する日 池上彰が危ぶむ「役に立つ」思想への傾注
「それなら、大丈夫じゃないか?」と思いますが、運営費交付金が減ったことで、実は、この科研費に応募が集中しているという現状があるんです。この狭き門を通るために、研究者たちは、「審査が通りやすい研究を」と考え、「いかに役立つか」ということに、研究が向いてしまっているのです。
さらに、科研費がもらえるのは、大体3~5年と、期間が決められています。
ノーベル賞受賞者のほとんどが30年という長い期間の研究を行っていることを考えれば、まさに危機。おカネと時間をかけて、じっくり行う研究がしにくくなっている状況です。
日本は、今後どうなってしまうのか? 危機を感じるデータがあります。
「TOP10%論文数」国際シェアの推移です。これは、世界で発表されたすべての論文のうち、他の論文にどれだけ引用されたかという回数を上から順に並べたときに、上位10%に入る論文のことで、それがどの国のものなのかを振り分けたものです。
日本の論文引用は減少傾向が続いている
引用される回数が多いということは、論文の質が評価される指標になるのと同時に、ノーベル賞受賞に近いとも言われているんです。日本は残念なことに、減少傾向にあり、飛躍的に上昇しているのは、中国。実は中国は今、科学研究の底上げのため、民間を含む研究開発費を増加させているんです。
こうしてみると、日本のノーベル賞受賞者は、もしかしたら、10年後減ってしまうのではないか? その頃、台頭するのは、もしかしたら、中国かもしれないと思うと、ちょっと寂しい気持ちになります。さらに研究者が日本で研究できないならと海外へ行ってしまうことも考えられます。シンガポールは、日本の研究者だけでなく助手も含めたチームで受け入れようとしています。それは、日本にとっては、大きな損失です。
「研究者の危機をどうするのか?」という宿題を解決するために、研究には、時間とおカネがかかるけれど、それがいつか、私たちのためになるかもしれない、「おカネをかけることの意味」を考えることが大事なのではないかと思います。
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