日本人の「ノーベル賞」受賞者が激減する日 池上彰が危ぶむ「役に立つ」思想への傾注
実は、ノーベル賞受賞者の多くは30年という長い年月、研究を続けていますが、それが“何の役に立つのか”という意識をしている人は、少ないといいます。最初から“役に立つ”ことにとらわれていない研究を続けてきたからこそ、ノーベル賞につながったように思えてなりません。
しかし、今、研究費の多くが“役に立つ研究”“結果が見込める研究”にしか、使われていないという現状があるのです。それこそが、研究者の危機というわけです。
背景に何があるのか?
まず、大学の研究費が、今、危機にあります。実は、世界的に見ても、研究費は、世界から引き離されている現状があります。平成27(2015)年、日本は、アメリカ、中国に続き3位となっていますが、その金額は、18.9兆円と、中国の半分にも満たないのです。
では、そもそも、大学の研究費は、どう賄われているのか? 基本的には、国から、運営費交付金が支払われています。いわゆる補助金です。これらが、個人研究費として、大学に所属する研究者などに配分されたり、人件費や教職員の退職手当などに使われたりしています。国立大学は、およそ4割をこの交付金に頼っているのですが、これが、平成16(2004)年以降、毎年1%ずつ減額されているのです。
国立大学の法人化が影響
それは、その年、国立大学が法人化したことに関係があります。法人化によって、大学は、企業との共同研究など自主的に大学運営を行い、教育研究水準の向上をはかろうとなりました。つまり、交付金に頼らず、自らの収益によって、経営力を強化していくことが求められたのです。その結果、交付される研究費用が減ることになりました。
とはいえ、研究者は、大学からだけでなく、個人として、おカネを集める術もあります。それが、科学研究費補助金、通称・科研費と呼ばれるものです。それは、文部科学省と日本学術振興会が公募し、審査を経て交付されます。
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