中国人の「爆買い」と「トイレ革命」の深い関係 共通する「外」「内」意識の存在とは何なのか

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こうすると、たとえば1人がこのトイレを汚したら、後に来る人は、「どうせ汚れているし、自分だけでも無事に使えればいいや」と思うようになり、どんどん雑な使い方になっていく。結局、自分が汚さなくてもほかの人が汚すというという潜在意識から、いくら高頻度で公衆トイレを掃除しても、すぐ汚くなり、外国観光客が悲鳴を上げる(もちろん国策のトイレ革命で公衆トイレの改善も進んでいると考えられる)。

逆に、日本は、共通認識レベルが高いので、清潔感を重視するほか、大都会に行っても「共同体」という潜在意識を持っている。つまり、「外」にいても「内」にいても、共同体の仲間が後から使うと考えている。結果、みんながきれいに使っているから自分もそうしなければという好循環にもなり、日本のトイレは基本的に清潔感があり、きれいである。

訪日中国人、特に観光バスを利用する団体客に話を聞くと、「高速道路の休憩スペースのトイレは、どこに行ってもきれいでびっくり!」のような話は今でも絶えないし、日本のトイレがいかにきれいでユーザー目線のデザインですばらしいかという発信も多い。中国のトイレレベルとの激しい格差に感心している。

日本人が使うものなら信用できる

実は海外での旺盛な消費行動もトイレ問題と共通している。トイレを使った人はどういう人だったのかを知らないと同様に、食品や化粧品だと、原材料の産地から最後の配達まで心配し、不安だらけだ。なぜかというと、原材料を生産する人、パッケージを作る人、商品の品質をチェックする人、物流関係の人は、すべて自分が知らない人で、つまり「外」の人間なのだ。中国は広いので、「共同体」が通用せず、悪質な人がさまざまな機会に顧客を騙す可能性が十分にある。

日本でもよく知られている食品安全問題もそうだが、「誰が作っているか」「何を使って作っているか」「運送中すり替えられているか」はまったく知らない状況であり、「いつ騙されてもおかしくない」という「被害者意識」は非常に強い。特に身体に入る食品と化粧品、または何よりいちばんの宝である子どもが接する用品には、おそらく過度と言ってもよいほど敏感で、中国メーカーへの不信感が強い。

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