飛騨高山にイスラエル人観光客が集まる理由 ナチス時代までさかのぼると理由が見える

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イスラエルから来たユダヤ教徒たち。念願の日本旅行でバスの中は大盛り上がり。サービスエリアでバスを降りると静かに祈りを捧げていた(筆者撮影)

テルアビブを中心に多い世俗派のユダヤ人には、戒律で禁じられている豚肉を使った豚骨ラーメンが今人気を呼ぶなど、宗教が生活スタイルにほとんど影響しない宗派も少なくない。一方、戒律を厳しく重んじる敬虔なユダヤ教徒の場合、金曜の日没から土曜の安息日などは一切の労働が禁止されているため、迎え入れる側にも相応の知識がないと困惑する場面も出てくる。

たとえば、エレベーターのボタンを押すことを避けるケースもあり、ホテルのスタッフに開けてもらうなどの補助を求めることがあるという。また、料理に使われている食材でも、イスラム教における「ハラール」と同様に、「コーシャ」と呼ばれる認証があるため、知らずに提供して断られてしまう場合もあるそうだ。

理解を深めることが観光客の増加に繋がる

政府が「観光立国」を合言葉に、急速に外国人観光客の受け入れインフラを整備する一方で、直接触れ合うことになるのは迎え入れる飲食店や宿泊先など市井の人たちでもある。宗教や生活習慣の違いなどに対する理解を深め、居心地の良い日本を感じてもらうことが、口コミやリピートで訪れる観光客の増加に繋がるだろう。

ちなみに、杉原千畝の関係資料「杉原リスト」は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」(世界記憶遺産)への登録を見送られる決定が下された。去年10月末の決定に、登録を信じてきた関係者の間には落胆が広がった。ただし、その人道的行為と功績の後世への記録、継承に深い意義があることは確かで、再び登録への再挑戦を望む声も出ているという。

記念館を訪れた60代のイスラエル人男性の言葉が印象的だった。「今回は夫婦で来たが、杉原氏の当時の功績を思うと涙が出る。この貴重な史実をもっと広く世界中に知ってもらいたいし、まずは日本に来たことがない自分の息子にも必ず訪れて日本とイスラエルの絆を感じてもらいたい。こうして一人の人間の温かさを知ることは、歴史書をただ読むよりもずっと心に深く残るのです」

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