「国体化」した対米従属が日本を蝕んでいる 米国は日本を愛しているという妄想

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──好んで従属?

白井 聡(しらい さとし)/政治学者、社会思想研究者。1977年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。著書に『未完のレーニン』『「物質」の蜂起をめざして』『「戦後」の墓碑銘』『永続敗戦論──戦後日本の核心』など。(撮影:田所千代美)

ほかの国は遺憾なことだと感じ、少しでも自由になりたいという意思を持っている。ところが、平均的な日本人にはそういう認識も意思も皆無だ。

一昨年末に訪日したプーチン大統領にもズバリ言われている。独立国でありたいという意思ぐらいは持っているのかと。意思さえもないのではないか。そういう国とは領土問題などまじめに交渉できない、と彼は示唆した。

結果、ロシアは返還する意向だった歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)にまで開発の手を伸ばすと最近言い出した。敬意を払うに値しない属国だと見切られている。こんな無残な状態を作り出しているのが、対米従属を中核にした統治システム「戦後の国体」だ。

──本書を今上天皇の「お言葉」から始めています。

「戦後の国体」は、事実上、ワシントンをピラミッドの頂点に置くシステムだ。今日、米国が日本人にとって精神的な権威にもなっている。そのとき日本の天皇の存在には何の意味があるか。もういらないということになる。日本人は気づかないままに、そういう精神状況を作ってしまった。そんな状況下で「お言葉」は発せられた。

対米従属問題は天皇制に行き着く

「お言葉」の中で、天皇とは単に日本国の象徴ではなく、国民統合の象徴だと何度も強調された。それは現に統合が崩れているからだ。仮に日本国民が統合を維持ないし再建する意思をもはや持たないのならば、統合の象徴もありえない。もう一度現在の統合の状態を見つめてほしいという呼びかけでもあったと考えられる。

──統合が壊れているとの認識が前提なのですね。

「失われた時代」によって社会が疲弊し、統合は壊れた。そこから再起できないのは、社会構造の歪みのためであり、その歪みは「戦後の国体」によってもたらされている。だから、「お言葉」は天皇自身による天皇制批判でもあった。

日本の対米従属の特殊性の問題は天皇制の問題に行き着くと『永続敗戦論』以来考えてきた。米国が“天皇化”すれば、日本の天皇の居場所はどこにあるのかが、必然的に問題になる。そんな状況が表面化してきた中で、「お言葉」は出てきた。思い切った行動には驚きもしたが、同時に、起こるべくして起こったとも思っている。

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