「家庭でも主役になりたい」ある父親の叫び 転職して、育児時短も取ったのに……

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もしかすると、脇役太郎さんの奥様は、それほど産後が重くなく、比較的元気に過ごされていたのかもしれません。しかし、産前とまったく同じ健康状態だったわけではないはずです。育休経験者の男性が世に伝えなくてはならないのは、子どもの世話はもとより、妻のケアのためにも男性は育休を取るべきだということではないでしょうか。

『上沼・高田のクギズケ!』で「わ・き・役」を紹介したのは、俳優・大杉漣さんの訃報を受けてのものです。ご存じのとおり、大杉さんは数多くの映画、テレビドラマに出演されました。演じていたのは、主役ではなく、脇役です。それにもかかわらず、俳優として重要な役割を果たし、大きな存在感を示していました。

TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ』(2018年2月23日放送)では、首都大学東京の宮台真司教授(社会学)が、大杉さんの存在感について、黒沢清監督の『CURE』(1997年公開)を例にして解説されていました。

マインドコントロールによって猟奇的な殺人を誘発する間宮邦彦(萩原聖人)とそれを追う刑事である高部賢一(役所広司)の2人が主な登場人物です。物語の途中で主役が間宮から高部に切り替わります。その合間に登場したのが大杉さん演じる藤本警察本部長なのです。

脇役は卑下するような存在ではない

宮台教授は、大杉さんが登場するとその前後で作品の空気感が変わると述べています。黒沢監督は、そうした大杉さんの役者としての「特別さ」に着目して、重要な場面に起用したと考えられます。大杉さんに対する周囲からの評価を踏まえれば、やるからには、主役でなければならないという脇役太郎さんの思い込みについては、一考の余地があるのではないでしょうか。脇役はけっして卑下するような存在ではないのです。

繰り返しになりますが、脇役太郎さんの仕事よりも家庭を重視する選択は、現代の日本社会では、簡単ではなかったはずですし、とても貴重なものです。ただ、最も考えなくてはならないのは、小さなお子様のいるご家庭では、世話(ケア)を最も必要としているのは子どもだということです。

だとすれば、主役は子どもであり、母親も父親も脇役に回るべきです。奥様との対話を大切にし、どちらが子育てを頑張っているかを比較することなく、どうすればしっかりと子どもの世話(ケア)ができるのかについて考えてみてください。

田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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