大統領への「忠誠心」がない新国務長官の実像 かつてはトランプ氏を猛烈に批判

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もう1つは、トランプ大統領と閣僚たちがシリアに対する緊急会議をしている時間を事実上邪魔してしまったことだ。その家宅捜査が大統領の貴重な時間を奪うほど緊急性があるとは到底思えない。すなわち、「国家への攻撃」という怒りの発言は、論理的に妥当であり、的を射ている。

この「国家への攻撃」というテレビでの批判発言を、トランプ氏の隣の席で聞いていたのはほかでもない、今回、就任したばかりのジョン・ボルトン国家安全保障担当・大統領補佐官だった。ボルトン氏については、超タカ派の外交手腕イメージが先行しているが、実は、有能な弁護士でもある。

米国の弁護士の世界では、若い時からどういう弁護士キャリアを積んできたかという経歴がモノを言う。その点、ミュラー特別検察官がカリフォルニア州で過ごした若き日の弁護士時代と比べると、ボルトン氏は著名な法律事務所に長年いたキャリアがあり、ボルトン氏のほうが、格が上である。

米国の法律家は巨大で複雑なディール(案件)をまとめるとか、訴訟でいえば、最高裁判決で勝訴するとか、具体的なケースで名を挙げるのが一般的だが、ミュラー氏のケースは、組織の中で出世してきた検察「官僚」としてのキャリアであり、「官僚」としては申し分ないが、純粋な意味でのバランスのとれた「法律家」としての評価は、73才という年齢の割には、未知数な部分がある。

そのミュラー氏について、ダーショウィッツ名誉教授は、「世間の評判を非常に気にする人物」とみなしている。今回の個人弁護士の家宅捜査は、メディア向けのインパクトを狙ったという見方も、あながち的外れではない。いずれにしても、ミュラー氏の捜査手口は、結果的に、米国の政治や安全保障を混乱させるタイミングと重なってしまった。

ポンペオ氏は「短期・中継ぎ」役か

そうしたなかで、トランプ大統領はシリア攻撃に踏み切った。超タカ派のボルトン氏が賛同したことは言うまでもない。ボルトン氏は上院の指名承認がいらないので、すでに大統領補佐官としてフルに活動している。

問題はポンペオ氏がどうなるかだ。北朝鮮問題では、必要以上に自信たっぷりな発言を繰り返すポンペオ氏だが、上院議員たちの間には、もし米朝首脳会談の合意などが、「プアリー」(下手な、みすぼらしい内容)な結果に終わったらどうするのか、という懸念が広がったのではないか、と筆者は観測している。

ポンペオ氏は、ハーバード大学ロースクールで学んでいる。必須科目の憲法の担当教授は彼の学年では、ダーショウィッツ名誉教授ではなかったのかもしれないが、同名誉教授は1967年から正規教授として2013年12月に引退するまでずっと授業を担当している。ポンペオ氏がその存在を知らぬはずはない。

次ページできる法律家ほど、生涯、「法の学徒」でもある
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