憲法改正は日米関係に一体どれだけ響くのか 「何のためなのか」を私たちで議論していこう

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:そこを聞きたいんです。倉持改憲案でいうと、個別的自衛権で自衛隊の役割もきちんと明記し存在をしっかり認定するということですよね。では、それを受けて「アメリカが引きます」となったら自衛隊の役割がさらに大きくなりませんか?

倉持:なります。だからたとえば防衛費が増えるとか、新たに他国と組むとか。あらゆる可能性を論議しなければなりません。また、経済や文化的関係性がここまでグローバルに密接に絡まり合い浸透している中で、個別的自衛権に限れば孤立するといった議論も逆にアンリアルな違和感があります。

攻守同盟は相互主義が必要

三浦:私が倉持改憲案でよくわからないのは、個別的自衛権に限るという点です。アメリカと同盟を結ぶならば集団的自衛権は入れないとおかしい。攻守同盟は相互主義が必要です。しかもそのような孤立主義というのはどうなんでしょう。つまり、韓国を助けないし、台湾を助けないということになりますから――。議論の余地がまだまだありそうです。

:西田さんはどうですか? 憲法改正の議論がある中で、アメリカとの関係は切っても切れないと思うんです。

西田 亮介(にしだ りょうすけ)/1983年京都府生まれ。東京工業大学准教授。博士(政策・メディア)。著書に『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、『情報武装する政治』(KADOKAWA)、『なぜ政治はわかりにくいのか』(春秋社)ほか多数。共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、共著に『無業社会』(朝日新書、工藤啓と共著)ほか多数。 専門は社会学、公共政策学、情報と政治等を研究。(撮影:梅谷秀司)

西田:アメリカとの関係から完全に離脱するというのは至難の技ですよね。ちょっと具体的に思い描きにくいものがあります。たとえばドイツと日本を比較してみるとわかりやすいかもしれません。ドイツには2つ特長がありまして、「東西ドイツの問題を抱えていた」ということと「EU(欧州連合)の存在」ですよね。アイデンティティの問題しかり、憲法の問題しかり、東西ドイツの統合のときに考えなければいけない契機を持っていたと。

それによってドイツは大変なコストを払うことになったわけですが、ある意味では僥倖(ぎょうこう)だったともいえます。そのときに自分たちのアイデンティティや、それからポスト冷戦のあり方などを、もう一度考える歴史的な契機を得ることができたのですから。

それと、やはりEUの存在です。アメリカと1対1で直接対峙するのではなく、EUに目配りしながら「いや、アメリカさん、そうは言ってもEUとの関係があるんですよ」なんてことを言いながらてんびんにかけることができた。一方われわれはアメリカとの関係以外に何もありませんでした。仮にいつの日にかASEAN(東南アジア諸国連合)的なものが総合的な安全保障等においても、より大きな機能を果たすようになるのであれば話は別ですが。

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