憲法改正は日米関係に一体どれだけ響くのか 「何のためなのか」を私たちで議論していこう

西田:それから三浦さんの「アメリカは(あまり)間違えない」という議論も結局のところアメリカにはアメリカの国益があり、日本には日本の国益があったということを看過しがちです。それが昭和の時代しかり、おそらく1990年代末までは、かなりの部分が重なってたところが大きいのだと思います。ただし、細々見ていくと、たとえば1980年代から1990年代の「日米半導体摩擦」問題しかり、1985年の「プラザ合意」しかり、沖縄の問題然り、アメリカの国益が優先され、たびたび日本の国益を毀損するような事態が起きていることは思い起こされてもいいのではないでしょうか。
不幸を誘発するのは護憲でも改憲でもない
堀:西田さんは恒久的護憲派でも改憲派でもなく「見守る」というスタンスを取られていますが、たとえば改憲に向けた立憲主義的な環境が整うためには、どういうプランが考えられますか?
西田:メディアと教育の問題が大きいと思っています。われわれには戦後史の具体的な知識と理解がすっぽり抜けています。この鼎談で議論してきたような昭和の戦後史の流れや、憲法が制定されたときのプロセス自体が、そもそも共有されていません。それから教科書のテキストの記述で見るならば、自民党はどうやって形成されてきたのかとか、成果は何か、課題は何なのかとか、そういう議論の素材自体が、多くの人はほとんど認識できないまま今に至っています。
むろん、ここでいう知識と道具立てをどのように規定するかは政治的な営みなので合意困難ですが、これらの知識と考え方が一巡してから、護憲や改憲を検討しても遅くはないと思いますね。
堀:倉持さんは「明日の自由を守る若手弁護士の会(通称「あすわか」)の活動や憲法カフェなど、政治家と市民の対話の場をつくっておられます。今回も「倉持改憲案」を積極的にしかけることで、憲法9条について国民に「自分ごと化」して考える土壌を拓こうとしています。
倉持:私の改憲案が100%正しいなんて考えていません。まだまだ議論が必要です。しかし今の政治に不透明感を感じているなら、「こういう案もあります」「これはどう?」というのをバンバン提示して、みんなで議論したほうがいい。そういう環境を整えることが大切です。
三浦:そうですね。私は、国民が考えないことを最大限担保してくれるのが、憲法9条だったと思っているので。「なんとなく怖いから改憲しない」というのではやはり不十分なのです。
堀:国民が青写真を描けるよう、「私たちの憲法なんですからしっかりと大方針を立てるべきなんじゃないですか?」というのは要求していかないと何のための憲法改正なのかわからないまま国民投票だけさせられてしまいます。それを避けたいからこそ、議論の場を増やしたいですね。
(構成:両角 晴香/ライター)
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