憲法改正は日米関係に一体どれだけ響くのか

「何のためなのか」を私たちで議論していこう

三浦:しかし、なかなか守られないのが2つ目と3つ目。日本の新旧・三要件は、自衛戦争をなるべく限定していくために、国連の中でさまざまに議論を試みてきた過程や、「国際司法裁判所」の判決にも目配りした、ごく抑制的な自衛戦争の理解となっています。

三浦 瑠麗(みうら るり)/1980年神奈川県茅ヶ崎市生まれ。国際政治学者(東京大学政策ビジョン研究センター講師)。東京大学農学部卒業、同法学政治学研究科修了(博士<法学>)。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店、2012)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書、2015)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書、2017)などがある(撮影:梅谷秀司) 

要は、外交の手を尽くし、ほかの手段がすべて尽きた後でないと戦争はしてはいけない。加えて、平たく言うと「殴られただけで相手を殺してはいけません」という均衡性の法則です。尖閣諸島をとられても、無血占領された場合にわれわれが中国本土をミサイル攻撃したら、自衛戦争の域を超えているのです。このように政府も専門家もしっかりと自衛権の範囲を解釈しているのですが、怖いのは、国民が、「自衛戦争って攻撃されたら何でもできるんでしょ?」などと勘違いしていることです。

西田 亮介(以下、西田):それで言うと「憲法9条とは単独に存在していたわけじゃない」というところが大事です。憲法9条は国体を維持するための昭和の知恵だったわけです。「憲法9条」と、「天皇制を擁護すること」と、「日米安保条約」が絶妙な緊張関係のなかで3点セットとなって、戦後の我々の社会が生き抜くための知恵でした。

ただし、ここでは沖縄などがすっかり忘れ去られていたことは、いわゆる「天皇メッセージ」と併せて覚えておく必要があります。それが現在の沖縄の状況につながっているわけですから。

当時の日本の状況を思い出してみてください。戦後の焼け野原で、われわれは何のリソースもなく、「どうやってやり直していくか」というときに、当時の国民は天皇制を残したいと思っているし、GHQもそのほうが統治しやすいと思っていた。3点セットの中で、経済にリソースを投入し、しかし、時に、過剰な軍事力の増強などアメリカからの要求を断るために憲法9条を機能させてきたわけです。

日米関係における憲法改正の位置づけ

:おかげで私たちの経済繁栄のベースが戦後につくられたわけですからね。実を言うと日本単独での憲法改正ということではなくて、いつもここに同盟国の存在があるわけです。皆さんは、日米関係における憲法改正の位置づけをどのように考えていらっしゃいますか?

三浦:まず、多くの人にとって、憲法9条2項は平和を守るためにすがり付く蜘蛛の糸というイメージだと思います。削除したらわれわれはアメリカと真裸で対峙しなければいけないし、「憲法上違憲です」と言えなくなると思っていますね。

実際は逆です。9条の2項を削除していけばいくほど、アメリカへの日本の発言権は高まります。なぜなら、自主性が高まるからです。現在、アメリカは日本に防衛を提供してくれて、われわれは基地を提供しているわけですよね。ただ、防衛に関して日本は先進国の中でもとりわけアメリカに依存度の高い国なのです。依存度によって自主性が下がり、発言権が減っているというのが現状です。

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