DMMがヤンキー支援ベンチャーに惚れたワケ 非大卒の就職を仲介するハッシャダイを買収

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「このままでは事業が小さくまとまってしまう」と懸念を抱いていたハッシャダイ経営陣(編集部撮影)

久世:亀山さんに「一緒にやろう」と声を掛けてもらったのは半年以上前。ちょうどその時期、僕らもこのままだと事業が小さく完結してしまうと悩んでいて。

注目されにくい市場だし、正直あまり儲かるわけではない。でも、これは意義のある事業だと信じている。非大卒の就活を「第0新卒」として、「第2新卒」のように前向きなブランディングをすることによって、僕ら以外のプレーヤーも入ってくる魅力的な事業にしたいとの思いがある。

亀山さんには半年くらい返事を待ってもらったが、最終的には自分自身が亀山さんの経験や考え方を尊敬できた点が決め手になった。「あまり儲からないですよ」ということも正直に話して、それでも「ぜひ一緒に」と言ってくれたので、考え方のズレもないだろうと。今後は僕らだけで細々やっていたのでは取れないオプションにも踏み込んで、成長を目指したい。

新規事業は「少額融資」

――今回の買収で、DMM側にはどんなメリットが?

亀山:DMMの経営層にも高卒が多いし、相性がいいと思う。うちはコングロマリット企業で、社内にいろいろな部門があるから、ハッシャダイで面白い人材がいればどこかの事業部で引き受けることもできる。大卒で入ってくる人が多い中に、生きのいい高卒人材を入れておくだけで刺激になる。多様性は重要だと思っている。

毎月行われるヤンキーインターンの卒業式。就職が決まった参加者を送り出す(写真:ハッシャダイ)

――新しい領域への展開は?

久世:3つ構想しているが、そのうち公表できるものは2つある。まずは少額のレンディング(融資)。ヤンキーインターンに問い合わせをしてくる人の中には、本当に東京に出るだけのおカネもないという人もいる。かつて事業規模が小さかったときには、僕が個人でおカネを貸したこともあったが、ある程度大きくなった今はそれが難しい。だからちゃんと仕組み化したい。

今ある貸与型奨学金の代わりになるようなサービスを想定しているが、大きな金額になると返済が大変になる。それを少額にして、きちんとリアルに返済をイメージできるおカネにすれば、奨学金の問題点を解決できると考えている。これを武器に、おカネがなくて動き出せないという人の状況を改善したい。

もうひとつが、まったく新しいアパレル事業。「Choose your Life」のTシャツがけっこう人気があることから発想した。企業のメッセージを掲載した衣料品はいわば広告のようなもの。これを僕ら世代に無料、もしくは安価に提供していく事業は十分に成り立つように思う。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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