政府は、基本方針の策定において、有識者の意見聴取やパブリックコメントを実施する見通しになっている。申請自治体である都道府県または政令指定市は、政府に計画申請するために、行政同意(首長)、議会議決が必須とされた。また、申請自治体が都道府県の場合、立地市町村における行政同意(首長)も要件とされた。また、IR事業者のカジノ免許の背面調査も、国際的にみて、かなり厳格なものになる見通しだ。
ただし、日本のIR区域認定および開業までのプロセスに要する期間は、国際的にみても、やや長いと考えられる。日本が参考としているシンガポールでは、プロセス開始から事業者選定(シンガポールは都市国家であり、政府が立地を決定)まで2年弱、開業まで5年であった。
プロセス効率化の余地も
日本は、プロセス開始から第1サイクルの区域認定までに3年間、開業までに6年間、第2サイクルの区域認定までに5年間、開業までに8年間を要する見通しである。日本は、IRについて、長年にわたる政官財の調査研究の蓄積があり、また、豊富な海外先行事例を活用できる立場にある。「世界最高水準の規制の実現」をしつつ、プロセスを効率化する工夫の余地があるはずである。
筆者は、今回の政府案、与党合意の過程で、地方IR誘致関係者の焦りを強く感じている。焦りの大きな原因は、区域数の上限3カ所、区域認定プロセスの長さ、事業性における地方のハンデなどである。多くの地方IR誘致関係者は、人口減と高齢化に立ち向かうため、「観光産業の起爆剤としてのIR」に期待をかけてきた。地方の誘致関係者は、地域経済界のリーダーであり、すでに自身が高齢であることも多い。
なお、与党合意では、区域認定数の見直し時期(3カ所からの拡張を検討する時期)を、最初の区域認定から7年経過後とした。最初の区域認定を2021年とすれば、見直し時期は2028年となる。仮に、2028年に区域認定数が拡張した場合、2028年を起点に、再び、上記のプロセスが繰り返されることになる。つまり、その開業時期は2030年以降とならざるをえない。慎重を期しつつも、スピードアップを検討するべきだろう。
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