タイ産の「ユーカリ植林炭」が選ばれる理由 現地日本食チェーンで人気、日本向け輸出も

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現在、同社が生産している炭は、ユーカリの木を使った炭を中心に、ラオス産の木(マイティユ)を使った備長炭、ココナツの殻で焼き上げたオガ炭(製材時に発生するオガクズを圧縮加熱成形して製造するオガライト〈成形薪〉を主な原料とした木炭)の3種類。

ラオス産の木を使った備長炭を焼き上げている炭窯。価格がやや高くなるため、バンコクでは高級料亭で利用されている(筆者撮影)

ユーカリ植林炭は、以前、谷田貝氏自身が焼いていたが、今は地方の5カ所の村の農民に委託。彼らが焼いた炭が、焼き方、大きさ、パッキングなど同社の基準を全て満たせば買い取るという条件で契約している。

備長炭は当初、タイのマカム(タマリンド)の木を使って焼き上げていたが、材料の安定供給が難しいため、今はラオスから輸入した木が材料。バンコクの高級料亭が顧客層だ。

日本への輸出も始まった。冷凍焼き鳥メーカーの工場を皮切りに、地方の居酒屋チェーンからの注文が続いている。同社のユーカリ植林炭は、高級ラインの備長炭と主に中国からの安い輸入オガ炭の中間に位置する価格帯。予算的に備長炭は難しいが、質の良い炭を仕入れたいと考える外食企業にとっては有望な選択肢のようだ。

谷田貝氏が進める「人の幸福の基盤である健康づくり」

紆余曲折を経て「炭」の事業を軌道に載せた谷田貝氏が新たに推し進めているのが、米ぬか酵素風呂だ。膵臓がんに苦しむ大学の先輩の幼なじみが山形で酵素風呂を利用し、今も元気に暮らしていることを知り、自分でも作ってみようと決意。文献をあたり、自ら有用微生物数種類を混ぜた培養液を作り上げ、米ぬかと撹拌し発酵させて、2017年に酵素風呂を実現した。

米ぬか酵素風呂の発酵熱は60℃超。指宿(鹿児島)の砂風呂のように中に身体を入れて身体を温めると、冷え性だけでなく、肩こりや腰痛、肌荒れなどを改善する効果があるとされている。

バンコクの人気マッサージ店「at ease」に導入された酵素風呂。身体が内側から温まり、肩凝りにも効果があるとリピーターが続出している(筆者撮影)

既に第1号の酵素風呂は、バンコクで人気のマッサージ店に導入され、好評を獲得。客単価を上げる効果が確認されている。日本の高槻市(大阪)にあるタイマッサージ店の他、京都の店でも導入が決定した。

米ぬか酵素風呂は「地産地消」がコンセプト。その土地で手に入る米ぬかや微生物を使って谷田貝氏が培養し、使用する桶も現地で調達している。

「タイと気候条件が違う日本で発熱できるのか心配でしたが、無事に成功にこぎつけた。米ぬか酵素風呂は美容や健康に良いだけでなく、メンテナンスも楽。大きさも90cm☓90cm☓200cmほどのスペースが要るだけなので既存の店にも導入しやすい。今後はタイだけでなくカンボジアやミャンマーにも横展開し、FC展開を計画しています」

レストランの焼き物料理に使用する炭とマッサージ店やSPAなど保養所向けの酵素風呂。一見、無縁のように思えるが、どちらも自然由来のモノを使い、サスティナブルである点は共通だ。おいしい料理づくりに役立つ炭と、身体を芯から温め健康へと導く酵素風呂。2つの事業は両輪となって、谷田貝氏の若い頃からのビジョン「人の幸福の基盤である健康づくり」を力強く支えている。

三田村 蕗子 ジャーナリスト
みたむら ふきこ / Fukiko Mitamura

福岡県生まれ。津田塾大学卒業後、マーケティング会社などを経て、現在フリーのジャーナリスト。流通業を中心に、ビジネス全般に関するテーマを追いかける。商売の仕組みや仕掛け、そこから生み出される世相や日本独自の消費傾向に関心を置く。主な著書に『ブランドビジネス』(平凡社新書)、『論より商い』(プレジデント社)、『世界一うるさい消費者にモノを売る50の方法』(同文舘出版)などがある。

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