与党IR実施法に関するWTは、合意までに6回を要した。合意項目数は、第3回で5項目、第4回で4項目(計9項目)、そして、第5回と第6回で全11項目が合意に達した。前述の6項目「カジノ施設規模」「入場回数制限」「入場料」「納付金率」「IR区域認定数」「中核施設の要件・基準」は、自民党、公明党の調整が難航した項目である。最後まで調整が決着しなかったのは、「入場料」「IR区域認定数」であった。
6項目の交渉結果は、「カジノ施設規模」が自民党案となったが、「入場回数制限」「納付金率」「IR区域認定数」「中核施設の要件・基準」はおおむね公明党案、「入場料」は自民党案と公明党案の折衷案に落ち着いた。
最大の焦点となった「IR区域認定数」については、自民党は「地方にIRの道を開く。少なくとも4〜5カ所にすべきとの意見が多い」を主張したが、公明党の「国会答弁を重視。当初2〜3カ所の意見が大勢」のスタンスに押し切られた。IR区域認定数3カ所の着地には、サプライズはない。ただし、自民党の4〜5カ所への拡張への挑戦、それに対する関係者の期待が実現しなかったかっこうだ。
今回の自民党と公明党の交渉では、今国会でIR実施法案を提出、成立させたい自民党の譲歩姿勢が目立った。来年、2019年には、参院選、統一地方選、憲法改正、天皇退位など大きなイベントが重なる。自民党としては、2018年中に法案を成立させたい意向があったわけだ。
ちなみに、公明党は、IRに反対ではない。2016年12月のIR推進法の採決では、公明党は、党内のさまざまな意見に配慮し、自主投票の措置としたが、公明党の議員のうち、衆参とも3分の2以上が賛成した経緯がある。
地方都市にもチャンスはあるが…
筆者は、今回の与党合意を、事業者視点で評価すると、「想定範囲、合理的範囲のなかで、中間より厳しめ」と受け止めている。与党合意のもとでも、大都市、地方都市ともIRの事業性を確保できるものの、事業規模は想定レンジ内の下限に近く、大都市の優位性が際立ち、地方都市がややハンディキャップを負う展開となるだろう。
合意に対する反応は、立場により異なる。自治体では、大阪府市の松井一郎知事、吉村洋文市長は、総じてポジティブな見解を表明。吉村市長は、おおむね大阪市が考えていた内容とコメントした。
一方、和歌山県の仁坂吉伸知事、長崎県の中村法道知事は、自らのエリアへのIR誘致に強い危機感を表明。とくに、地方都市の首長たちは、「IR認定区域数」に鋭く反応した。
それに対し、国内事業者、海外IR事業者は、与党合意にほとんどコメントを発さず、発する場合でも「合意を歓迎する」である。今後、特定エリアに根差さない国内企業(全国区)、海外IR事業者は、より大都市にウエイトを置くか、あるいはターゲットエリアへの特化を強めるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら