次に注目したいのが「演技班」。昨年末の回まで、何となく沈滞ムードに支配されていた状況への刺激剤となったのは、スポット的に登場した、演技力の高い脇役群である。具体的には、落語家役で出てきた、波岡一喜(月の井団吾)、笹野高史(喜楽亭文鳥)、そして北村有起哉(月の井団真)。
その「演技派」の魅力が存分に発揮された回が、12月16日(土)放送分である。月の井団真は月の井団吾の兄弟子だが、人気では大きく水を開けられていて、その上恋敵でもある。その団真が、寄席・風鳥亭で落語「崇徳院」をかけることになるのだが、当然客はまばら。そこに人気者の団吾が突如風鳥亭に現れ、そのおかげで客は殺到。兄弟子・団真のために盛り上げに盛り上げるというストーリーだ。
この回で、月の井団真役の北村有起哉が演じた落語「崇徳院」が、ことごとく見事だったのだ。北村有起哉も東京出身であり、上方落語を演じるのには、相当なハードルがあったはずだが、そんなハードルをほとんど感じさせない完璧な口調だった。
「高橋一生推し」が目立った
そして最後に指摘したいのは「美形班」の存在だ。名前だけを見れば「お笑い班」「演技班」に比べ、表層的な感じは否めないが、実は「美形班」こそが、視聴率の低下を防ぐ固定票獲得に、大きく寄与したとも考えられるのである。このグループのメンバーに分類されるのが、松坂桃李(北村藤吉)、高橋一生(伊能栞)、成田凌(北村隼也)。中でも、このドラマは、何といっても「高橋一生推し」であった。
昨年急激に盛り上がった高橋一生ブームを、「わろてんか」は徹底活用したふしがある。映画・不動産・百貨店などを多角経営する日本有数の企業=「伊能商会」の社長というセレブな役回りを与え(阪急グループの創業者・小林一三をモデルにしたと思しい)、徹頭徹尾ノーブルな言動をさせたこともさることながら、私が注目したのは、高橋一生ファンを喜ばせるための、言わば「サービスカット」の存在である。
1位:第136回(3月14日):料理をする&忠臣蔵・堀部安兵衛のコスプレを披露
2位:第45回(11月22日):松坂桃李(北村藤吉役)と相撲を取る
3位:第148回(3月28日):街のチンピラと大立ち回りをして圧勝する
これらは明らかに、高橋一生ファン向けの「サービスカット」だった。そしてこの、高橋一生を中心とした「美形班」の存在が、固定票を確保しつつ、さらには、「美形班」と「お笑い班」の有機的な連携こそが、このドラマの安定的な骨格となっていたのだ。
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