東急ハンズ新宿店、「オタク店員」登用の理由 創業42年を迎える生活雑貨大手の危機感とは

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靴のケア用品を扱うコーナー(6階)の店主・藤田康雄さんは、長年売り場を担当してきたベテラン社員。靴に関する話になると熱弁を振るう(記者撮影)

さらに、同社の経営幹部が「最大の課題」と認めるのが顧客層の高齢化だ。東急ハンズは1976年に創業。東急不動産が、坂の多い渋谷に保有する土地の活用策を考え抜いた結果、自ら小売業を始めたことにさかのぼる。

他社にない斬新な品ぞろえと売り場構成で、1978年の渋谷店開業後は老若男女から幅広い支持を集めた。だが、創業時からの熱心なファンは60代を超え、来店頻度も低下。現在の顧客層は40~50代が中心となり、若い世代の取り込みは、ロフトや無印良品など同じく生活雑貨を扱う後発組に後れを取っている。

店舗主導の仕入れを復活

新規顧客も開拓しようと、新宿店では3月から新商品の投入やレイアウト変更を行った。これまで豊富な商品がきれいに陳列された「巨大なコンビニ」のような状態だったが、特定のテーマに沿った商品紹介を強化するなど、売り場の見せ方にメリハリをつけた。

戸村伸子さんが店主を務めるホビーコーナーはマニアックな商品が目立つが、若い女性客も意外に多いという(記者撮影)

7階の理科系や社会科系のアイテムを扱う売り場では、若年層もターゲットにミニチュア版の道路標識を導入。「以前の売り場はもう少し地味で、会社帰りのサラリーマンの男性客が多かった。若者にも興味を持ってもらえるような入り口を作りたい」(ホビーコーナーの店主・戸村伸子さん)。

新宿店以外でも、店舗ごとに合った改革のあり方を検討していくという。同社では2006年から全店舗の商品について原則本社が一括仕入れをしてきたが、独創的な面白みのある商品を増やすため、大型店を中心にかつて行われていた店舗主導の仕入れを復活させる動きが出てきた。

全国的に東急ハンズの名前は広く知られているものの、社員の1人は「お店の中は実際にどんなふうなのか知らない人は多い。認知度の高さにあぐらをかいていた部分もある」と語る。「足を運べば面白いものが見つかる」と思わせるような店舗の魅力を発信できるかが、今後の成長のカギとなる。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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