スポティファイ悩ます音楽業界との駆け引き

定額配信の巨人がNY上場、黒字化は可能か

スポティファイは独自のモデルで会員獲得を続けてきた。プランは主に2つ。広告が流れ、検索や楽曲のスキップなどで一部の機能が制限される「フリープラン」と、広告なしですべての機能が利用できる月額980円の「プレミアムプラン」だ(月額1480円で家族6人まで共有できるファミリープランもこの一部)。

敷居の低い無料プランで積極的にユーザーを取り込みつつ、広告を見聞きさせることで収益化する。さらに随所でプレミアムプランへの転換を促していく。無料と有料のプランを併せ持つ「フリーミアム」と呼ばれるビジネスモデルだ。

収入の9割を占めるのはプレミアムプランだ。2015年末に2800万だった会員数は2016年末には4800万に成長、2017年末に7100万に達した。一方で、フリープランの会員数も同じく6400万、7700万、9200万と急成長しており、ユーザー獲得を続けながらプレミアムプランへの誘導も進んでいることがうかがえる。

ユーザーとアーティストとの”出会い”を重視

スポティファイが最も注力してきたのは、ユーザーとアーティストもしくは楽曲とのマッチングだ。スポティファイの専門スタッフをはじめ、一般ユーザーやアーティストが編集する豊富なプレイリストがそれを促す。

スポティファイのアプリ上には、専門スタッフや一般ユーザー、アーティストなどが編集した多数のプレイリストが並んでおり、新たな音楽に触れることができる(写真:Spotify)

有名人がプレイリストに加えたことを契機として、無名だったアーティストが注目され、一気にヒットにつながった事例も少なくない。最近ではAmPm(アムパム)という日本の覆面2人組アーティストがスポティファイでのヒットを契機に海外で注目されている。

加えて、個人の視聴動向や嗜好に合わせた、機械学習による楽曲のレコメンドも重要な要素だ。もちろん、アプリの使いやすさも考え抜かれている。プラットフォームの強化に向け、2017年は収入の約10%に当たる3.96億ユーロ(500億円超)を研究開発に投じた。こうした取り組みが実を結んでいるのか、プレミアムプランの解約率は年々低下し、ユーザーの定着率は高まっている。

上場後の戦略の中核にあるのは、さらなる投資だ。レコメンドを強化するべく、人工知能や機械学習の開発に費用を投じる。戦略的な企業買収も狙う。また、さらなるアーティストの参加を促すこと、未進出国への展開、広告ツールの開発なども掲げている。こうした施策によって、2018年はプレミアムプラン会員数を9200万~9600万まで増やす計画だ。

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