「画像処理技術」の最先端で起きていること モルフォ社長にロングインタビュー
平賀:はい、彼らもビジネスでやっているので、どうしても制約はあります。ただ、競争力の高いものが作れれば、大手としても、自分たちだけで利用するのではなく、外販をしていきたいという力学が働くのではないでしょうか。今は制約がありますが、それくらい良いものを作ることができれば、将来的には広く展開していけるのではないかと考えています。
カメラあるところみなビジネスチャンス
村上:今後の成長について、どのような順番で変化を起こしていくお考えですか?
平賀:ここ1~2年の売り上げの伸びは10%程度でとどまっていますが、ビジネスが飛躍する時というのは、スケールするビジネスモデルが軌道に乗った時ですよね。われわれのビジネスモデルの中でスケールする要素があるのは、ライセンスで1コピーごとに課金するロイヤリティモデルです。このモデルが成立しているのが、実はスマホの分野だけなんです。
ですから、そうしたモデルを他の分野にも広げていきたいと考えています。それは車載かもしれないし、医療かもしれないし、ファクトリーオートメーションかもしれない、監視カメラかもしれない。カメラがあるところならわれわれの技術が入る余地はいくらでもあるのです。今はその余地があるところにとにかくトライしていっているという状況です。いずれ、筋が良さそうな領域を取捨選択するフェーズが来ると思っています。
また、もう1つ挑戦しようとしているのが、IoTの分野です。IoTの分野では、クラウドコンピューティングとエッジコンピューティング(端末の近くにサーバーを分散配置し、よりモノに近い位置でデータを処理するという考え方)の連携が今後主流になってくるはずです。エッジ側のデバイスに提供する技術はすでにあるので、クラウド側にもわれわれのテクノロジーを提供し、双方を連携させて、全体としてわれわれの技術を使っていただく世界を実現したいと考えています。そうなった場合、今まではエッジ側でテクノロジーを提供して課金するというビジネスモデルだったものが、サービス全体に課金するビジネスモデルに変化します。そのために、クラウド系の技術にも色々取り組んでいるところです。
村上:なるほど。そこは画像関連技術を持っている多くの会社が狙う部分で、大企業との競争になるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
平賀:われわれの強みはエッジ側の処理技術で、スマホでも、よりチープなデバイスでも、高度な画像処理を実現しています。その点では大手より先を行っていると思います。一方でクラウドの部分は、弱いといえば弱いので、そこは課題ではあるのですが、必ずしも自社だけでやる必要もありません。
村上:今の御社は、利益も出ていて株価も悪くない状態で、30億超の資金があります。ある意味、「踊り場」と見ることもできると思います。次なる成長に向けて、その資金をどのように活用していくのですか?
平賀:財務戦略はまだ決めきれていないんですが、一つ取り組もうとしているのが、スタートアップへの投資です。テクノロジーの目利きができるメンバーが社内にいるんです。すでにコンセプトという10人程度のスタートアップに資本参加させてもらっています。ただ、なかなかスケールしないんですよ。