会社員必読!「企業型確定拠出年金」の基本 「放ったらかし」にすると老後で結構差がつく

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傷病手当金と出産育児に伴う手当も減額されます。月1万円の掛け金を拠出している方が傷病手当金を受給することになった場合、拠出前と比べると1日当たり約222円手当が減ります。傷病手当金は最長で1年半受給が可能ですから長期療養となった場合は12万円程度トータルで手当が減ります。

また出産手当金も傷病手当金と同様に計算しますので、月1万円の拠出で1日当たり222円の減額です。育児休業手当は前半と後半で若干計算式が異なりますが、拠出前の給付額と比べるとやはり10万円以上のマイナスとなります。これらを考えると、健康に不安のある人や出産予定の人の場合、お得な制度だからといって掛け金を多くしすぎるのはよくないかもしれません。

もしDC以外に企業年金がない会社の場合、「選択制」の掛け金は月5万5000円までとするところが多いですから、掛け金が多くなるとその分上記手当の減額も大きくなります。「掛け金拠出は優先させるが、傷病手当金の減額も気になる」という人は、社会保険料減額分を利用して、民間の医療保険や所得補償保険などを検討することも可能です。あるいは出産予定の人なら、年に1回掛け金の金額変更を認めている会社が多いですから、掛け金の調整を検討してもいいでしょう。

とはいえ、健康不安や出産予定などのない人であれば、「選択制」DCは積極的に活用したい制度です。40歳の人が月1万円の積立を20年継続すると60歳時点で12×20=240万円の老後資金を作れます。忘れがちですが、同時に税金、社会保険料を支払わずに済んだ額は20年間で84万円にも上ります。iDeCoであれば、企業年金がない会社員の場合月2万3000円が掛け金の上限ですが、同条件の会社員の選択制の掛け金上限は5万5000円です。会社によって、役職などにより掛け金上限をそれ以下に設定している場合もありますが、iDeCoよりも多くの掛け金で資産形成が加速できます。

DCで注意したい「3つのポイント」

掛け金拠出のパターンがいずれかであったとしても、DC全体として注意したい点が3つあります。1つは、社員が運用商品のパッケージであるプランを自由に選べないことです。iDeCoであれば運用商品の情報開示がされているので加入前に比較検討が可能ですが、DCはそれができません。中には、あまり内容のよい投資信託ではないものもあります。

2つ目は「教育」です。DC導入企業は社員に対し十分な投資教育を実施するように定められているのですが、実態は不十分な会社も多いようです。iDeCoも同様ですが、確定拠出年金は誰かに「やらされる」ものではありませんし、だれかが「やってくれる」ものでもありません。教育が提供されるのを待つだけではなく、自分自身の資産形成として意識をもって自分から学ぶ姿勢も大切です。

3つ目は転職時の資産の取り扱いです。さきほども触れましたが、DCは個人資産なので、会社を辞めてもiDeCo等に資産を移換し継続します。その移し換えの際、「資産はいったん現金化しなければならない」というルールがあるのです。投資信託であっても退職時にはすべていったん売却しなければならず、運用がマイナスの場合は損失が確定してしまいます。会社都合は対処が難しいですが、せめて自己都合退職を考えている場合、投資信託はあらかじめ値動きの少ないものにスイッチングしておくほうが賢明でしょう。

老後のための資産形成の必要性が高まる中、DCがある会社にお勤めの方は、より恵まれている環境にあると言えます。にもかかわらず、会社の制度について無関心だったり、活用しきれていない人が多いのは残念です。新年度が始まり、新規でDCが導入されるという会社もあるでしょう、転職先がDCという人もいるはずです。ぜひご自身の資産形成と認識し、積極的に取り組まれることをお勧めします。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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