民主主義は「権威主義の誘惑」を断ち切れるか 中国・ロシアが台頭、欧米は動揺するが…

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中ロ両国は非民主的政治体制を意味する「権威主義国家」の代表的な国である。そして2人とも民主主義を否定している。習近平主席は「外国の政治制度モデルを機械的に模倣したりするべきでない」(2017年10月18日、中国共産党大会での報告)と語り、プーチン大統領は「他国やその国民に自分の基準や規範を押し付けるのはお門違いで誤りだ。民主主義がよい例だ。外から押し付けようとするのは意味がなく非生産的だ」(『オリバー・ストーン オン プーチン』文芸春秋社)と述べている。

ともに西欧流民主主義を受け入れることを拒否しているのだ。とはいえ多くの国民が様々な情報に接することのできる現代社会において為政者が権力を維持するためには、形式的にせよ何らかの正統性を得ることが不可欠である。そこで両国とも「選挙」という手続きを経ることで自らの権力に正統性を付与しようとしているのだ。「選挙」の結果、ふたりとも「圧倒的多数の支持を得たのだから、最高権力者の地位に座るのは当然である」と主張できる。一人の人間に権力を集中させ、誰にも文句を言わせない正統性を付与してその権力を自由に行使できる。それが権威主義国家なのである。

もちろん「選挙」といっても、民主主義国のそれとはまったく異質なものである。自由な言論、表現などの基本的な人権、あるいは自由な立候補、投票などは願うべくもない。権力者が政敵や批判勢力に対し手段を選ばず弾圧していることは言うまでもない。

権威主義国家の「魅力」は伝染している

そんな不自由な国など願い下げたいところだが、中国やロシアは国際社会でますます力を持ってきている。思い返すと冷戦が崩壊しゴルバチョフ大統領がブッシュ大統領と握手したとき、あるいは中国で鄧小平氏が改革開放路線を打ち出したころ、西側諸国は自分たちが勝利し、自由と民主主義、市場経済が東側諸国に広がっていくことを確信した。

ところが現状はどうだろうか。劣勢にあったはずのロシアや中国が安定感を増し政治的、経済的に世界各地で影響力を強めている一方で、欧米先進民主主義国は政治的にも経済的にも混迷を深めている。戦後世界秩序の根幹部分を形成し担ってきた米国では、トランプ大統領が自由貿易主義や国際協調主義を否定し自国中心主義にひた走っている。そればかりか欧州も英国のEU(欧州連合)離脱問題に加え、大陸側ではイスラム教徒や移民の排斥を主張するポピュリズムの嵐が収まらず各国の内政を揺るがしている。

ひょっとして先進民主主義国の統治システムは模範的なモデルではなくなりつつあるのかもしれない。代わりに魅力を振りまいているのが中ロに代表される権威主義国家の統治システムだ。中小国の為政者にとって「中ロ方式」は魅力的なようで、次々と伝染している。独裁色を強めているトルコのエルドアン大統領、汚職追放の名目で王族や富豪を一斉摘発するなど強引な手法で体制改革を一気に進めるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、長期政権を目指し総選挙前に野党を解体したカンボジアのフン・セン首相と枚挙にいとまがない。

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