「非正社員に頼る会社」が免れない3つの変化 ルール大転換で「雇用の調整弁」は維持困難に

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多くの産業で空前の人手不足が深刻化している中、派遣会社は対応のよい派遣先に取引を集中させている。「とりわけ派遣業界は、バブル期並みの人手不足となっている」(派遣会社幹部)ためである。派遣先企業が自社経験の豊富な優秀な人材を活用し続けるには、直接雇用するか、無期雇用派遣に転換するしかないだろう。

「同一労働同一賃金」で不合理な格差は禁止

第3の衝撃となるのが、2019年以降に導入される、正社員と非正社員の間の「同一労働同一賃金」制度だ。基本給や賞与、手当などの待遇について、正社員との間に不合理な格差を設けることが禁止される。

職務内容や能力などについて正社員と変わりがないにもかかわらず、待遇に格差が生じている場合、企業に説明責任が課される。これは政府が今通常国会で提出を予定している、働き方改革関連法案の柱の一つとなっている。

政府は2016年12月、法案に先行する形で、「同一労働同一賃金ガイドライン案」を提示している。そこで基本給や手当、福利厚生などに分類したうえで、基本的な考え方を説明している。

たとえば基本給が職業経験や業績、勤続年数に応じて支払われる場合や、賞与が会社業績への貢献度に応じて支払われる場合は、同水準の支給が原則となる。ただ経験や貢献度に違いがあれば待遇差を認めるとしている。手当については、時間外や深夜・休日労働の手当は同じ割増率での支給を求め、通勤手当や精皆勤手当などについては格差を認めないとした。

こうした変化は、すべての日本企業にとってひとごとではない。非正社員の処遇や就業規則を現状維持としたままでは労使トラブルを招くおそれがある。非正社員を低賃金で雇い止めも自由な、「雇用の調整弁」として活用し続けるのは困難になっていくと考えたほうがよさそうだ。

『週刊東洋経済』3月24日号(3月19日発売号)の特集は「非正規が消える―無期雇用化、同一賃金の衝撃」です。
風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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