「引っ越し難民」を救う物流ベンチャーの威力 スマホアプリで引っ越し当日でも依頼が可能

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ピックゴーに登録中のドライバーは現在3500人。今年1月に報酬の当日払いを導入したことが追い風となり、足元では毎月300人ほどのペースでドライバーが増えている。一般的にドライバーは、ガソリン代や駐車料金、高速道路料金など日々の出費が多いが、報酬を受け取るまでに1~2カ月ほどかかる。ピックゴーでも従来は締め日を設け、最長30日後の入金となっていた。新たに登録したドライバーの中には新規開業者も少なくない。

留学生の都内での引っ越しを受注した軽貨物ドライバーの柏崎鉄也さん。企業荷物の配送の傍ら、引っ越しの仕事も積極的に受注している(撮影:田所千代美)

ドライバーが増える中、その質をどう担保していくかが課題となっている。CBクラウドでは、ドライバーへの各種マニュアルの提供に加え、配送で特別な取扱いが求められる荷物の場合、携帯アプリを使ったeラーニングで一定の点数を取らないと運べない。今後はeラーニングの対象を、配送の基本的な事項にも広げ、新規開業者の習熟度向上につなげたい考えだ。また、軽貨物ドライバーとしての経験が浅い人には、ほかのドライバーが運転する軽ワゴンに同乗するプログラムの実施も検討中だ。

冒頭の引っ越し作業を受注したドライバーの柏崎鉄也さんは「引っ越しは接客業でもあるので、できるだけ依頼主とのコミュニケーションを取るように心掛けている」と話す。

同社も、引っ越しなど個人荷物の配送は、企業荷物の配送とはドライバーに求められる資質が違うと考えており、今後はドライバーの評価を、個人向けと企業向けで分ける考えだ。

ドライバーの収入増をどう実現するか

ピックゴーの配送件数に占める個人荷物は、まだ1割程度。CBクラウドでは、ドライバーの登録が増えていることから、全体の仕事量を増やすためにも、個人荷物の配送需要を掘り起こしたい考えだ。今後は引っ越しだけでなく、家具の分解や組み立て、パソコンの設定などの付帯業務も追加できるようにする。松本CEOは、「仕事の幅を広げることで、ドライバーのやりがいを高め、収入増につなげていく」と話す。

CBクラウドの松本隆一CEOは、ドライバーにとっての仕事の魅力や待遇を高めることに、経営の重点を置いている(撮影:梅谷秀司)

引っ越しを含む物流業界では大手の下請けに中小事業者が2次、3次と何社も連なる。大手ゼネコンを頂点とする建設業界に近い多重構造だ。物流業界では階層ごとにマージンが抜き取られていくため、末端にいるドライバーが最も割を食う。ドライバーの待遇改善が進まないかぎり、人手不足の解消は難しい。

ドライバーにとって魅力的な働き方をどう実現していくか。対応できる引っ越しの規模は小さいが、ドライバーがクラウド上で仕事を直接受注するという取り組みは、課題山積の物流業界に一石を投じそうだ。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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