「引っ越し難民」を救う物流ベンチャーの威力 スマホアプリで引っ越し当日でも依頼が可能

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軽ワゴンの荷台は幅1.2m、奥行き1.8m、高さ1.2mで、合計350kgまで荷物を積める(撮影:田所千代美)

ピックゴーを展開するCBクラウドは仲介の場を提供しているだけで、依頼主とドライバーとのやり取りには原則として介入しない。契約成立時に引っ越し料金の一律10%を手数料として同社が得る仕組みだ。軽貨物ドライバーは、営業や見積もりのための訪問が不要なため、低料金を打ち出せる。また、ほかの運送の仕事をしながらでも、空き時間があればスポットで仕事を入れられるため、稼働率を高めることができる。

ピックゴーは、もともと企業間の荷物配送向けに2016年に立ち上げられたB to Bのサービスだ。食品や印刷物、建材などの配送を依頼したい企業と、軽貨物ドライバーをマッチングする。2017年8月からは個人の荷物配送もサービスに加えた。フリマアプリの「メルカリ」などを通じた個人間売買(C to C)の広がりで、ソファなど大型家具を運ぶニーズが高まると見たためだ。さらに単身引っ越しにも着目。日本の単身世帯数はこの10年で3割増加しており、今後さらに増える単身引っ越しの需要を取り込む構えだ。

引っ越し難民問題で注目が集まる

最繁忙期を迎えた今春の引っ越しシーズン。3~4月には年間の引っ越し件数の3分の1が集中するが、今年は希望どおりの予約ができない人が相次ぐ。仮に予約が取れても、料金は例年よりも高い。日本通運は3月下旬~4月上旬の単身パックの割増料金を従来の2000円から5000円に引き上げた。ヤマトホームコンビニエンスも同様の割増料金5000円を設定。引っ越し業界も人手不足で、人件費や委託費の上昇分が料金に転嫁されたためだ。

「引っ越し難民」が社会問題化したこともあり、ピックゴーには単身引っ越しの依頼が増えている。CBクラウドの松本隆一CEOは、「軽ワゴンに積める荷物の量には制約があるが、単身引っ越しの新しい選択肢として消費者に訴求していきたい」と話す。

ピックゴーの利用者の中には、荷物の大半は別の引っ越し業者に依頼し、残しておいた身の回りの荷物を後日ピックゴーで運ぶといったケースもあるという。ピックゴーでは、ドライバーとマッチングさえできれば、引っ越し当日でも依頼が可能で、時間変更の融通も利きやすい。仕事や家庭の都合で引っ越しを1回でできない人にとっても、使い勝手がよさそうだ。

利用者が気になるのは、トラブルだろう。引っ越し作業中に生じた損害は、CBクラウドが加入した保険でカバーされる。荷物の賠償額は最大1000万円。建物に損害を与えた場合など第三者賠償責任は最大1億円だ。

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