中国との結びつき強めるミャンマーの実相 押し寄せる観光の波、豊富な資源も持つ

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中国大使は挨拶で、中国とミャンマー2国間の結び付きが昨年もますます進展したと振り返りつつ、「胞派(パウッポー)」としての友情がさらに高まっていると評価。これは、テインセイン前大統領が中国の習近平・国家主席と会談した際に「胞派」の関係、つまりビルマ語で“血を分けた兄弟”という表現でお互いの友好関係を表現したことに由来している。

そもそもミャンマー(当時ビルマ)は、1949年に中国共産党による中華人民共和国が誕生した際、非共産主義国家として最初に国家承認した国である。中国と国境を接し、欧米諸国から制裁を受けていた時期から緊密な関係を築いてきていた。国際的に孤立するなかで、中国がいわば後ろ盾的な存在となり深く依存していたと言える。

こうして、民政移管以前は世界の主要プレイヤーが不在のなか、石油や天然ガスのパイプライン開通など資源・インフラの大型プロジェクトを通じて、中国はミャンマーへの投資を有利な条件下で進め、主導権を握ってきた。

「一帯一路」でさらに強まる結び付き

中国は、石油や天然ガスなど豊富な資源を有するミャンマーを虎視眈々と見つめている。マラッカ海峡が封鎖された場合、ミャンマーを経由地点とすればインド洋から直接中国国内に資源を輸送するルートが確保できることから、安全保障の観点からも地政学的にも重要な国であることは間違いない。

昨年9月ヤンゴンで開催された、世界の華僑・華人実業家が集まる「世界華商大会」でも、中国が提唱する現代版シルクロード「一帯一路」構想が、大きく取り上げられた。2年に1回開催される大規模な大会で、ミャンマー人と中国人のネットワークを構築してビジネスに発展させることを目的とし、国内外から約2300人が集結。ミャンマーのミン・スエ副大統領は挨拶で「世界華商大会のミャンマーでの開催は、中国人企業家によるミャンマーへの投資にチャンスを与えるだろう。国境を接し、貿易・文化でも長い歴史があるミャンマーは、一帯一路構想の成功に貢献できる」と、中国との強固な関係に意欲を示したという。

一方で、民政移管後、全方位外交を推し進めてきたテインセイン前政権下では欧米諸国との距離が縮まり、相対的に中国の重要性が薄まってきてもいる。中国が取り組むダム建設の大型プロジェクトは、環境破壊などを理由に地元民からの反対が相次いだため延期が発表され、長らく凍結を余儀なくされている。このように、中国にとっては対ミャンマーへの投資リスクが近年高まっている側面もある。

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