中国との結びつき強めるミャンマーの実相 押し寄せる観光の波、豊富な資源も持つ
少し前の話になるが、ミャンマー第2の都市マンダレーでは、中国人による開発やビジネスが過熱し、“反中ソング”なるものも流行したという。外資系企業に勤めるミャンマー人女性は、ミャンマーと中国の関係について、「私たちの国の発展にとっては、大事な支援国だと思う。でも、特に地方などでは行き過ぎた開発や、昔からの住民の生活や労働が奪われることに対する反感が大きいのも理解できる」と複雑な表情で打ち明ける。
国際社会を敵に回したロヒンギャ問題で再び
だが、ここへきて皮肉なことに、国際社会で非難の的にもなっているロヒンギャ問題に関して、両国の関係は再びその距離を縮め始めている。欧米諸国が「人権侵害」だと声高に叫ぶなか、中国はあえて批判を避けるなどして協調関係を示す姿勢を取っているのだ。
ミャンマーとしては手の平を返したように人権を盾に非難の嵐を浴びせてくる欧米諸国とは打って変わって、内政干渉を控えるスタンスをしたたかに取ってくる中国の存在は、一部でわき起こる国民の反中感情を持ってしてもなお重要なものなのだろう。
特にロヒンギャ問題で情勢が不安定なラカイン州には、港湾や資源開発で巨額の資金を投じてきた背景もある。春節を祝う式典でミャンマー側は、平和構築への中国のサポートに感謝の意を述べつつ、特にラカイン州での人道的支援についても謝辞を表したという。
こうした状況を欧米メディアは皮肉を込めて報じている。AFP通信は「ロヒンギャに対する軍の弾圧をめぐり国際社会の怒りにさらされているミャンマーは、古くから友好関係にある中国の存在に“慰め”を見いだしている」と表現、米紙ニューヨーク・タイムズは「トランプ政権下の不意をついた形で、中国が大規模なインフラ建設や少数民族との和平交渉などを通じて、再びミャンマーを中国に依存させ始めている」と指摘している。
中国への傾斜を強めるのはミャンマーだけではない。中国に経済的に支援を受けながら、独裁色を強めて欧米諸国の非難を浴びているカンボジアなどを含め、中国のプレゼンスを利用しつつ利用されることを厭わない東南アジアの側面も浮かび上がってくる。
今年1月には、中国とミャンマー、タイ、カンボジアなどメコン川流域の5カ国がカンボジアの首都プノンペンで首脳会議を開催した。ここでも、他国への内政干渉を控えることを前提としたうえで、メコン川流域各国の鉄道や港湾などのインフラ開発について、中国との一層の協力促進が確認された。中国側には、「一帯一路の要衝」としてますます東南アジアでの存在感を高めていく思惑も垣間見える。
ハード面だけでなく、人々の往来もますます活気を帯びている。世界遺産・アンコール遺跡を抱えるカンボジアをはじめ、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオスなどメコン川流域各国を訪れる中国人客の数は昨年、約1500万人となり増加の一途を辿っている。背景には、中国とメコン川流域を結ぶ国際線の増便などがある。
タイ、マレーシア、シンガポール、ミャンマーと4カ国の春節を巡り、浮かび上がってきたチャイナパワーの源泉。ヨーロッパやアメリカなど先進諸国の政治の不安定化がますます露わになるなかで、現代版シルクロード構想を掲げる大国の存在は、今後どのように変遷してゆくのか。
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