中国との結びつき強めるミャンマーの実相 押し寄せる観光の波、豊富な資源も持つ
「戌年」である今年、イスラム教徒の多いマレーシアでは犬のオブジェやイラストなどを巡り論争が巻き起こっていたが、仏教徒が9割を占めるミャンマーでは、打って変わって戌年を盛大に祝おうと犬のファッションショーなるものが開催されていた。赤く彩られた特設ステージに、思い思いにオメカシをした(された)犬たちが登場してお披露目され、大勢の家族連れなどで混雑した。
チャイナタウンで露店を出していた中華系ミャンマー人の男性は、少しなまった英語でこう話した。「この時期は同胞が多くここにも訪れるよ。そもそもミャンマーと中国は相性がとてもいいんだ。私は親の世代からここに住んでいるけれど、差別や不便を感じたことはほとんどないよ。中国人観光客も、ここは仏教の国だから居心地がいいんじゃないかな」
急速な発展の裏で息づく市井の暮らし
確かに、ヤンゴン最大の観光名所である、小高い丘にそびえ立つ仏塔シュエダゴン・パゴダには、その眩いばかりの金色の輝きをひと目拝もうと、中国人観光客の団体が大挙して訪れていた。地元の僧侶らが静かに祈りを捧げる姿を写真で撮り、電飾輝く仏様を背に自撮り棒で写真を撮り、恐らくもう撮影されることに慣れているピンクの袈裟を着た子どもたちの横に立って“集合写真”を撮る――。
ちょっとしたテーマパークに来てしまったような気分になり、厳かな気持ちが一瞬かき乱されるが、それさえも変化しゆく生活の一部として受け入れ、変わらずに黙々と祈りを捧げているミャンマーの人々の姿を見ると、不思議な感覚を覚える。ふと、ミャンマーの人たちの信仰心の深さを思う。
東京でヤンゴンから留学生として来ていた20代の女性の自宅に取材でお邪魔した際、彼女がわざわざミャンマーから持ってきたと見せてくれたのは、小さな黄金色の仏様の置物だった。大事そうに両手に抱えてその小さな仏様を見せてくれながら「毎日、お供えをしてお祈りをするの。お母さんの病気も良くなりますようにって、お願いするのよ」と話してくれた。
急速な発展を受け入れつつ変わらぬ暮らしを続ける素朴な空気感は、一般の人たちがごく普通に持ち続けている心の有り様を映しているのかもしれない。ちなみに、日本を観光で訪れるミャンマー人たちからも、その信心深さはうかがえる。彼らに人気のスポットだという鎌倉の大仏近くの土産物屋では、ミャンマー人たちの土産物としてミニチュアの鎌倉大仏が大人気なんだそう。なんでも1人でいくつも大量に買っていくそうで、日本の大仏をお土産にもらって毎日拝むといつか日本に来られる、という都市伝説もあるようだ。
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