この熱効率は高ければ高いほど優れているが、これまでのエンジン開発手法では熱効率を上げるとエンジン出力が低下する傾向にあった。対して「高速燃焼技術」や「可変冷却システム」などによって、高い熱効率を保ったままでエンジン出力を従来型から約1.6倍にまで向上させた。また、最大熱効率の発生領域を広げたことで、実際に街中を走行した際のいわゆる実用燃費数値の向上にも期待がもてるという。
③「新型無段変速機(CVT)『Direct Shift-CVT』」の注目点は、CVTの動力伝達効率を上げるため乗用車用のCVTとしては世界で初めて「発進用ギヤ」を組み合わせたことにある。
CVTは構造上、発進時(ベルトの低回転時)と高速時(ベルトの高回転時)に伝達損失が大きかったが、この発進用ギヤによって低回転時のロスを低減しつつ、高速時の高回転側ではミッションの変速比幅(レシオガバレッジ)をクラスの平均値から10%以上向上させた7.5(ちなみにレクサスLS500の10速ATでも8.23)を達成することで、高速時のベルト回転数を低下させ伝達効率の悪化を抑制している。
こうした電動駆動車の昇華には大いに期待したいものの、中核を担う内燃機関にしても高効率化という意味では将来的に技術的な限界点へと近づいていくだろう。ただ、それと歩調を合わせるようにHVやPHVシステムもバッテリーやモーター、そしてインバーターといった「電動化主要3部品」が格段に進化していくことが予想される。
電動駆動車のCO2削減やその先へ
また、この次元まで技術革新が進んでくるとHVやPHVと主要部品を共有しやすいEVは航続距離のさらなる増加が見込めるだろうし、FCVにしても水素充填インフラ(水素ステーションなど)の普及を味方に低価格化も進むだろう。
冒頭の「EVが台頭するのか?」といった風潮は、電動駆動車という言葉の解釈や定義があいまいだったことによるものだ。電動駆動車とは“EVそのもの”を示す言葉ではなく、HVやPHVにあてがわれた言葉であり、そのシリーズとして主要部品を共有するEVやFCVも含まれるとすれば腹落ちするのではないか。
今回トヨタが発表した技術にしても、内燃機関とHVシステム、そしてその駆動力を路面に伝えるパワートレーン全体で高効率化を図るというアプローチであり、いずれも電動駆動車のCO2削減やその先のEVやFCV技術の向上には大きな意味を持つ。
ちなみに「①新型直列4気筒2.0Lの直噴エンジン『Dynamic Force Engine』」との組み合わせとなる「②新型2.0L用トヨタハイブリッドシステム」は、この3月のジュネーブモーターショーで発表された新型「オーリス」やレクサス「UX」などに搭載されることから、本年中には日本市場でもTNGAによる新型パワートレーンを搭載した車種が販売されるはずだ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら