トヨタ「アル・ヴェル」改良で何が変わったか 独走の高級ミニバン、乗ってわかった進化

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あるいは、これまでも3列目の使い勝手を優先して、あえてひとつ下の「エグゼクティブパワーシート」を選ぶユーザーも少なくなかったのだが、シートヒーターや読書灯がなかった。ビジネスに使う人にとって、それではあまりよろしくない。

そこで本革シートを選ぶとそれらが付いてくるよう設定が変更された。また、中堅グレードの上級仕様のシート生地が、これまでファブリックと合成皮革のコンビだったところ、すべて見た目にも質感の高い合成皮革にするとともに、前席シートヒーターや空調シート、ステアリングヒーターなど設定した。

さらには、エアロ仕様のエグゼクティブラウンジを追加したり、逆にハイブリッドのエアロ仕様にもエントリーグレードを設定して選択肢を広げたりするなど、より実際のニーズに即した設定とされた。

そういった表面に出るものだけでなく、目に見えない部分も全体的に大きく進化していることも、実際にドライブするとよくわかる。まず感じるのが、静粛性の高さと乗り心地のよさだ。

高級セダンにも負けない快適性を目指した

マイナーチェンジにあたって、高級セダンにも負けない快適性を目指したという。聞けば、開発にあたって本当の高級車というのはどういうものかを学ぶため、運転手付きの高級車として最高峰ともいえるメルセデスの「マイバッハ」を題材とし、その域に一歩でも近づけるようにと研究したという。音や振動はもとより、ブレーキング時にほとんどカックンとなることもなく、同乗者が不快に感じないその仕上がりだ。

静粛性については、これまでフロントのみ採用していた合わせガラスを2列目にも採用したのをはじめ、各部を手当したことで大幅に高まっている。今ではマイクとスピーカーを使って1列目と3列目の間で会話できるようにしたミニバンもあるが、これならそのままでも問題なく会話できる。

乗り心地についても、サスペンションチューニングを見直すとともに、ボディの変形を抑えるべく、これまでリアサスまわりのみ施していた構造用接着剤の使用部位を大幅に増やした。この効果はかなりのもので、実際にドライブフィールにおいても、土台がしっかりしたことで足まわりが抵抗なく、よく動くようになったことを直感する。これに伴い操舵応答性や直進安定性も大きく向上している。

そんな、内容の濃いマイナーチェンジを行った両車。中身の進化を金額に換算するとそれなりになるであろうところ、あまり上昇していない点も評価できる。現行モデルの初期型ユーザーでも、もし試乗したら乗り替えたくなるのではと思うほどの仕上がりになっている。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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