中国の春節に沸くシンガポールの最新事情 スマート国家ならではの新たな風景が広がる
シンガポール名物のチリクラブ屋選びも一苦労だったそうで、日本人もよく行く有名な大型店舗は「サイズのバリエーションが乏しい」のでNG。しかも、15人全員が一緒に会話ができる大きな丸テーブルが必須で、地元民の間で有名な老舗店を予約したという。結局、その店でいちばん大きいカニ、しかも雌に比べてさらに大きいという雄のカニを3杯、特別に注文することになったそうだ。
春節の連休を終えた彼女は、親族皆の注文をすべてかなえて過ごすこの日々が、毎年いかに疲れ果てるものかを早口でひととおり述べたあと、来年のその時期がくるのが早くも怖いと、憂鬱な表情を見せた。
タイやマレーシアでも、見た目から中国人観光客かと思いインタビューをすると、実は東南アジアで暮らす中華系華人たちであるケースが多く、彼らがASEAN諸国間を春節の連休で気軽に移動していることがよくわかる。
中華系シンガポール人の春節とは
では、国民の7割以上を占める中華系シンガポール人の春節はと言うと、フィリピン人家政婦のFacebookをのぞくと垣間見えてくる。共働きの割合が多く、フィリピン人女性たちが、家庭で活躍しているシンガポール。大のSNS好きである彼女たちは、日々の生活のあらゆるシーンを写真におさめアップする。
特にこの時期、彼女たちのタイムライン上はシンガポール中の“春節映え”するスポットで撮影した写真であふれる。なかでも、中華系の裕福な一家の下で働く女性のFacebookには、アワビやなまこなどの高級食材をふんだんに使った大ご馳走とともに、大家族との幸せそうな集合写真が映し出されていた。
さらに、春節支度の手伝い風景としてアップされていたのは、大量の札束と赤い封筒の写真。これは、「紅包(アンパオ)」と呼ばれる中国のお年玉で、日頃の感謝を込めて、行きつけの店の店主やコンドミニアムの管理人などにまで配られたりする。フィリピン人家政婦の女性曰く、働いている家庭によってその封に入れられる額は大きな差がつくのだという。
「ケチな雇い主だったら数百円以下もザラだけれど、ラッキーな家政婦は、その雇い主の親戚や友人たちからももらえたりして、合計1万円以上になることもあるわ!」
出稼ぎの女性を多く受け入れているシンガポールにあっては、春節時にいかに“お年玉”をもらえたか、フィリピン人たちの間でも大いに盛り上がる話題なのだろう。
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