中国の春節に沸くシンガポールの最新事情 スマート国家ならではの新たな風景が広がる
デパートの服飾売り場も、赤や金色のチャイナドレスがずらりと並び、下着売り場などはこちらが見ていて恥ずかしくなるほど、真っ赤でゴージャスなブラジャーやショーツがずらりと陳列されている。本当に身に着けるのかと思うが、店員曰(いわ)く、春節の時期は縁起を担いで下着までも赤くそろえる女性が多いのだという。
さらに、東南アジアで有名なタイガービールの箱も赤い春節仕様、幸せをもたらすとされている「みかん」も、うやうやしく1つずつ小ぎれいにラッピングされ、赤い箱に宝石のように詰められ売られている。日本産のみかんは、特に高級品として高値がつくそうだ。
こうして、文字どおり春節に向けた“爆買い出し”を済ませると、あとは自宅で家族そろってゆったり過ごすのみだ。春節の連休は、ほとんどの企業や店舗は休み(大型ショッピングモールなどは除く)、タクシーはもちろんウーバーの台数も減る。シンガポールに越したばかりの日本人が「旧正月のシンガポールがゴーストタウン化している!」と驚いていたが、あれほどいた人たちは皆どこに消えたのだろうかと思うほどガランとしてしまうのだ。
海外旅行に出掛けるケースも多いが、日本の正月風景と同じように自宅でゆったり過ごすのが中華系の過ごし方。シンガポールで放送されたマクドナルドの旧正月向けCMでは、孫から祖父母までが1つの家に集い、ハンバーガーを食べる様子がユーモラスに映し出される。まさに、大家族が集まって過ごす中華系シンガポール人の象徴的な春節が浮かび上がる。
“民族大移動”は東南アジアの華人たちも
その代わりにシンガポールを訪れているのが、実は東南アジアの華人たちだ。シンガポールは、中国人観光客の春節期間中における渡航先ランキング3位となっているが、この時期民族大移動しているのは中国本土からの人だけではなく、東南アジアの華人、華僑たちも多くを占めている。
「マレーシアが中国人旅行客を大歓迎する事情」(3月9日配信)に登場した中華系マレーシア人の女性もご多分にもれず、シンガポールを一族総出で訪れた。ニュージーランドや香港などに散って暮らしている総勢15人にも及ぶ親族一同が、一緒に泊まれるホテルを半年前から予約。「祖母に始まり叔父、叔母、子どもたちもみんないるので、もちろん部屋は同じフロアで、かつコネクテッドルームでないとダメと言われていたので予約が大変だったわよ!」と、その苦労を大声でまくしたてる。
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