身長100cmで「2児の母」となった女性の人生観

早稲田大学で学び、2度の留学にも挑んだ

夏子さん自身、車イスで街に出かけるだけで注目を浴びる。小さな子どもは夏子さんを見て、親に「あの人、何?」と聞くが、親は「行くわよ」と話をそらせて立ち去ろうとする人が多い。

「ジロジロ見られて嫌だとは思いません。それより見ないほうがいいとか、存在を隠されるほうが私はすごく嫌です。だから、障害者を知ってもらうチャンスだと思って、目が合った子どもに、“こんにちは。車イスだよ”と自分から話しかけたりしていますよ」

新宿から表参道まで健常者なら20分で行けるが…

昨年11月には新宿から表参道までJRと地下鉄を乗り継いで移動する様子をユーチューブにアップした。健常者なら20分で行けるが、駅員に連絡して電車に乗るスロープを出してもらい、エレベーターを乗り継ぎ60分かかった。それでもいつもより早いほうだと苦笑する。

「障害者が当たり前に暮らせる社会に」と訴える伊是名夏子さん(写真:週刊女性PRIME)

「車イスだから大変なわけではなく、ハード面が整っていないから大変なわけでもなく、ちょっとの思いやりや理解がないことが怒りにつながることが多いですね。

昨日も新宿に行きましたが、駅でエレベーターに乗るのに5回待ちました。車イス優先エレベーターと書いてあっても、スーツケースを持った人や歩ける人が先に乗ってしまう。そういうことが毎回、毎回起こるので疲れますよ」

これまで各地で講演をして実情を話してきたが、2010年からはコラムニストとしても活躍。沖縄の琉球新報や東京新聞・中日新聞で障害者の日常や子育てなどをつづる連載を続けており、ブログもひんぱんに更新している。

これからの目標はNPOを立ち上げること。すでに「イエサポ15」と名前もつけている。障害者のヘルパーは15歳からできるので、高校生など若い人に広めていきたいと、やる気満々だ。

大学卒業後、沖縄で小学校の英語講師をしていたこともあり、若い人に関わる仕事を再びやりたい。いずれ大学の教壇にも立ちたいという。

「地域の中で私のような障害者が生きているのが当たり前になれるように、障害者がどうやって生活しているのか、どうやって子育てしているのかを、若い人たちに伝えていきたいです。若いうちに知ることで、もっと助け合いが広まるんじゃないかな~」

持ち前の行動力で、周りの人をどんどん巻き込んでいく夏子さん。

ひとりの強い思いが、大きなうねりになり、社会を変えていく。そんな日を夢見て、今日も発信を続ける──。

(取材・文:萩原絹代/撮影:坂本利幸)

萩原絹代(はぎわら きぬよ)/大学卒業後、週刊誌の記者を経て、フリーのライターになる。1990年に渡米してニューヨークのビジュアルアート大学を卒業。1995年に帰国後は社会問題、教育、育児などをテーマに、週刊誌や月刊誌に寄稿。著書に『死ぬまで一人』がある。
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