世界の自動車市場、成長の限界はどこなのか 先進国と新興国「1人当たり台数」で読み解く

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一方、これを新興国で考えてみるとどうだろうか。同じく各国の人口と乗用車保有台数から人口1人当たりを割り出してみよう。すると中国が人口1人当たり0.1台、インド:0.02台、タイ:同0.12台、南アフリカ:0.12台、ロシア:0.28台などとなった。

こうみると、自動車産業の鉱脈はやはり新興国に眠っているように見える。先進国における人口1人当たり乗用車保有台数の限界値が、おおむね0.5~0.6台とすれば、中国もインドもタイもまだまだ伸びる余地があるのかもしれない。さらにいえば、新興国では人口増も続いている。

神の見えざる手は新興国に当てはまるか

しかし、私はさほど楽観視していない。なぜならば、中国は歪んだ「一人っ子政策」によって人口のピークを近いうちに迎える。おそらく2029年か2030年あたりが人口頂上となり、そこから日本のように、ゆっくりと加齢していくだろう。

どのような国でも、自動車の販売は近いうちに限界を迎えると思われる。実際に、日本の歴史を見てみよう。これは、同じく自動車検査登録情報協会が発表している日本における乗用車保有台数の推移を示したものだ。

いまから50年前、高度成長期といわれた1968年における日本の1人当たり四輪車保有台数は、わずか0.04台にすぎなかった。現在の10分の1以下程度だ。中国の1人当たり台数に最も近いのは、日本の1972年ごろだが、10年後(1982年)には同0.21台、1992年には0.30台にいたっている。

さらに、中国は、かつていわれた日本の国民総中流とは違い、所得の格差がさまざま報じられている。現在の先進国基準である「1人当たり四輪車保有台数」の0.5~0.6台にまで成長する余地があるかについて、私はここで断言しない。ただ、中国が日本と同じような道をたどるなら20年後ぐらいに同0.30台ぐらいまでは伸びるかもしれない。

こう考えるとやはり中国やインドをはじめとする新興国の需要をいかに取り込んでいくかは、日本の自動車産業の帰趨を占うといえるだろう。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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