世界の自動車市場、成長の限界はどこなのか 先進国と新興国「1人当たり台数」で読み解く

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ここに興味深いデータがある。G7(先進7カ国=アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、カナダ、イタリア)各国の人口と四輪車保有台数から割り出した人口1人当たりの乗用車保有台数だ(2015年データを使用)。

日本は人口1億2797万人に対し、乗用車保有台数は6098万台と1人当たり0.48台となる。アメリカは同0.39台、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアといった欧州主要国とカナダは同0.50~0.63台の間だ。現在、先進国では自動車販売が限界を迎えているといわれるが、ここで見ると人口1人当たり乗用車保有台数の限界は0.5~0.6台と考えていいだろう。

いまだに成長市場としてアメリカは0.4台以下の位置にある。これは人口増によるためだ。いわゆる例外的な国となる。一方で、このG7に参加していない先進国の人口1人当たり乗用車保有台数を計算すると、スペイン:0.48台、オランダ:0.49台、スイス:0.54台となる。やはり0.5~0.6台に収斂しているとわかる。

これは乗用車保有における「神の見えざる手」ともいえるかもしれない。

日本の新車販売の限界

日本における人口1人当たり乗用車保有台数の0.48台はどのような意味を持つだろうか。自動車検査登録情報協会の2015年発表によれば、軽自動車を除く自動車の平均使用年数は乗用車が12.38年、貨物車は13.72年となっている。この数値は、日本国内で新車として登録してから抹消する年数を示している。

あくまでざっくりした値になるが、そこで2015年時点における乗用車保有台数6098万台を12.38年で割ってみると、約490万台となる。

この数字は、2015年の新車販売台数である505万台と近い。日本では少子化の進行によって、若者の数が昔よりも減っていて自動車の新規需要よりも買い替え需要のほうが大きい。この数字の近似は成熟国家の現状を示しているといえる。

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