ヘリ空母は日本の安全保障をどう変えるのか 山下万喜自衛艦隊司令官インタビュー

拡大
縮小
甲板を艦首側から後方を見たところ。その拡張性はどう生かされるのか(筆者撮影)

――それはいわゆる「自由で開かれたインド太平洋戦略」につながるものか。

そのとおり。それは安倍総理がいつも口にされるキーワードだ。

中国の海洋進出と海賊対処活動

――多国間関係について言えば、東南アジア諸国は中国の海洋進出もあり、パートナーシップを求めている。日本の艦艇は将来、南シナ海をもっと航海することになるのか。

われわれがパートナーといかにしてお互いに理解を深めていくかについて言えば、たとえば、西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)やインド洋海軍シンポジウム(IONS)がある。こうした国々の枠組みの中で相互理解を深めていくことが、先ほど述べたマルチラテラルの方向性における努力の1つとなる。

そのマルチのベースになっていくのが、われわれが海賊対処活動などを実施している地域になる。特に太平洋からインド洋を経て、ペルシャ湾に至る海域だ。ここはわれわれのみならず、いろいろな国々の経済の生命線になっている。そこにおいて、いろいろな国の港に立ち寄ってみたり、共同訓練を行ったりすることを通じて、いかに海洋の安全保障が重要かについてお互いの理解を深めている。

――たとえば、どのような国々か。

シンガポールやマレーシア、ベトナム、インドネシア、パキスタン、スリランカ、インド、バングラデシュなどだ。区別なく、いろいろな国に立ち寄っている。

――海上自衛隊は海賊対処活動にもう何年も参加しているが、今後派遣する艦艇の数を増やしたり、高性能な艦艇を派遣したりする計画はあるか。

若干誤解があるかもしれないが、海自の艦艇の寄港は何も海賊対処活動に直結しているわけではない。海賊対処活動に向かう途上を利用して寄港している。

現在行っている海賊対処活動において、艦艇を増やしたり、減らしたりという計画は少なくとも今のところない。

――アフリカのジブチは自衛隊にとって重要な拠点になっているのか。

(防衛)大綱などを読めばわかると思うが、ジブチがアフリカにおける重要なポジションにあるのは間違いない。国際平和協力活動なども含め、今後のジブチの活用法はどうあるべきかについて、さらに高いレベルで議論されている。

ジブチはもともと海賊対処の起点にはなったが、エチオピアの入り口であったり、アフリカ東部の入り口であったりする。今はソマリアの海賊対処がメインになっているが、将来どのように国際活動に使っていくかについては、高いレベルで議論されている。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT