こうした人たちがオークローンに転職してくる理由とは何だろうか。「『面白い仕事をする最後のチャンスだ』。50代を目前にして、そう自分に問いかけるサラリーマンがたくさんいるということだ」とヒル氏は言う。
このような野心は特に目新しいものではない。英オックスフォード大学のヒュー・ウィタカー教授は、日本の中小企業経営者が好んで使う言葉に「一国一城の主」というものがあることを紹介し、英国の「人の家は城塞である」という言葉になぞらえている。
起業が少ないのは文化のせいではない
英国人ジャーナリストのボブ・ジョンストン氏は1998年の著作『チップに賭けた男たち』で、ソニーやシャープ、キヤノン、カシオ計算機といった世界トップクラスのAV・家電メーカーを創り上げた、強烈に野心的で独創的な男たちの物語を描いた。
「(日本人は誤ってそのように描かれることが多いが)『顔のない人々』が、大胆にリスクを引き受け、海のものとも山のものともつかない新技術に社運を賭けるとは(中略)想像しにくい」と同氏は書いている。
日本の起業が低いレベルにとどまっているのは、文化的な制約が原因なのではない。政府や大企業に責任があるのだ。資金調達できなければ企業は成長できないが、中小企業向け融資の85%では銀行の要求によってオーナーの個人資産が担保に入れられる。担保の評価額が、借入額の上限を自動的に決めているのだ。
他の先進国では、個人が担保として差し出す金額は日本ほど多くはない。日本の個人破産制度も他の先進国に比べると相当に厳しい。状況は改善されつつあるが、起業を阻む障壁は今も厳然とある。
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