保育園、親のホンネは中身だって重視したい

「質の高い保育」は、どうすれば実現できるか

井上竜:土地柄、世田谷区は教育熱心な方々もいる、今は選べる状況でもそもそもないんですけど、今後はそういう所にも目を向けないといけないんじゃないかと思うんです。

後藤:まさにそこが今、いちばん大事だと思っています。世田谷区はだいぶ前から、お子さんが充実した幼年期を過ごせる保育とはどういう考え方だろうと、ずいぶん前から議論していて「保育の質のガイドライン」というものを作って、新規開設の事業者さんに向けて、冊子や漫画にして配っています。

現場の方々が意識してくれないと質の底上げが図れないので、そこから力を入れています。実際に園長OBの方を中心に各私立園を巡回して、一緒にいい保育について考えるきっかけも持たせていただいたりとか。そこは世田谷区の大きな柱と思っています。

井上正:井上さんのおっしゃること、まさに同感です。保育所というのは社会的なインフラで、水道、ガス、電気、鉄道などと同じで、福祉という考えで最低限これだけは守らないとというのはもちろんあります。でも質というのはそれだけではいけない。弊社ではエデュケアと言って、保育だけじゃなくて教育(エデュケーション)とケアは両方必要だという大きな保育方針でやっていますし、画一的にお預かりするのではなく、お子さん一人一人の個性を伸ばしていこうと努力しています。

自治体によっては、希望者が申し込めば英語やリトミック(音楽教育法の一つ)の受講を認めてくださる。あるいはオプションサービスと言って、たとえば紙おむつをメーカーから直接保育園に送ってもらい、保護者が家から持参しなくて済むといったことを、かなりの自治体が認めて下さっています。ただ世田谷区は、平等でないといけないとしてなかなか認めて下さらない。

後藤:行政としてどこまで統一的に展開していくべきなのかは、どういう保育を考えていくのかに帰結すると思うんです。人によっては英語のサービスをあまり幼いうちから体験するのは、かえってよくないとおっしゃる方もいる。なので選択でということになる。児童福祉施設を整備して事業展開していく中で、そこを統一的に全部やるというのも個人的には違うと思う。質の担保がサービス拡充と必ずしも一致しないということもある。

英語のサービスがあると、今の保護者の方々には評価が高い。そういったことをやっていきたいとおっしゃる新規の事業者さんもあるんですよね。柔軟にメニューとして展開していただく分には、不可能ではないかなと思います。細かいメニューでみれば今は、私立の園でもそれぞれの方針に基づいてやっているので、あまり厳しい制約を設けているわけでもない。

お子さんが充実した幼年期を過ごせる保育とはどういう考え方だろうと、ずいぶん前から議論しています(写真:ハフポスト編集部)

利用者としてはいろんな選択肢があってほしいが…

――利用者としては当然、いろんな選択肢があってほしい。

井上竜:保育と教育の境目が非常に難しいと思いました。自分の子にいろいろ体験させたいから選択肢は多い方がいいというのは、親の気持ちとしてある一方、送迎の手配や受け入れに手間が一つ一つかかって、保育士の負担にもなる。そこまでして、本来の子どもをみる仕事が手薄になってほしくないという気持ちもある。習い事をさせたいんであれば、別の場所に送迎したり、親が自らシッターさんを手配して通わせたりとか、やりようはある。あれもこれも保育で、というのはわがままな気もしますよね。

先ほど紙おむつの話が出ましたが、持ち帰りにしている保育所では保育士にも多くの負担がかかっている。区や行政の判断で「それは一括で持ち帰らないでいい」とすれば、保育士も喜ぶし保護者も助かるかもしれない。

今、末っ子を預けている保育園の保育士さんはとてもよくして下さっているんですが、処遇の話を新聞で読むと「ええっ、こんな給料であんなことまでやってくれているの? そこまでしなくてもいいし、逆にもうちょっと払ってもいい」と思うぐらい。保護者としては複雑な気持ちがあります。お子さんをみたいという思いで保育士になった方が多いはずなので、負担を軽くして、そこに注力できるようにしてほしい。お金だけじゃないやりがいというところにも本当は踏み込んでほしいと思います。

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