保育園、親のホンネは中身だって重視したい

「質の高い保育」は、どうすれば実現できるか

――でも東京都でもいくつかの自治体は既に(待機児童解消のための緊急策として、ベビーシッターを派遣する「居宅訪問型保育事業」を)やっていますよね?

泉谷:でも、今までは枠が10人とか。安心できるレベルではないです。

井上正:我々はもともとベビーシッターから始まった会社なので、実は我々も渋谷区の事業をやっているんですけど、ベビーシッターが集まればもっともっとやりたい。保育士もそうですけどベビーシッターも、とにかく保育を担う人材が不足している。

今回の小池知事のプランはまさに待機児童対策。待機児童は都市問題だから都がやらなければならない事業で、すごくいい制度なんですけど、人手不足です。保育所でも保育士資格のない子育てサポーターが集まらなかったり。それと同じで、ベビーシッターも本当に不足して困っているんですよね。

――それはどうしてなんでしょう?

井上正:一つは保育人材は子育て世代の女性が多いんですね。保育士で、産休・育休を挟んでベビーシッターになる人も増えている。しかし、そういう方が働ける時間は10時から5時までなど、コアタイムに限られている場合が多い。でもベビーシッターは早朝や夜間に急に必要になったりするので、その人材が圧倒的に不足する。だから50億円の補助制度が始まっても、この時間帯はいいけどこの時間帯はダメということが十分に起こりうる。

もう一つの問題は配偶者控除。ベビーシッターで夫婦共働きという方はだいたい、10月ぐらいから(夫が所得税の控除などを受けられるように妻の収入を抑える)調整に入ってきて、だんだん働いてもらえなくなる。ここはぜひ国にも、働いたら働いただけのメリットが返ってくる税制にしていただきたい。

3つ目はマスコミの方にお願いです。保育士やベビーシッターはきつい、長い、安いといった負の形容詞が多いような気がします。これだけ保育人材が不足しているんで、ぜひプラス面も報じて頂きたい。お子様の人格形成にも関わっていく、本当にやりがいのある仕事だし、給料も実はどんどん上がってきています。何より定年がない。70、80代で働いている方もいらっしゃる。すごく魅力的な仕事だということを打ち出していただければ、待機児童も減ると思います。

「長い」は社会の縮図、日本の働き方がおかしい

――給与面以外ではどういう条件があればもっと担える人材が増えますか?

井上正:きつい、長い、安いと言いますが「安い」はだんだんよくなっている。しかし「長い」は、社会の縮図。日本の働き方がおかしいんです。子育て中なのに朝早くから夜遅くまで残業とか土日出勤とか。それを支える保育所やベビーシッターはもっと重労働になるじゃないですか。

泉谷:ハァー(ため息)

井上正:そこは日本の会社も変えないといけないし、保育の担い手たちのシフトが上手く回るような働き方にならないといけない。資格だけにこだわらないというのはまさにそういうことですし、「長い」は減らさないといけない。

やっぱり退職する方が多いですからね。せっかく入ったのに。年間に4万人、養成校を新卒で出て、2万人しか保育士にならない。なっても現場に来て「こんなはずじゃなかった」と、転職するような現実がありますね。

あと「きつい」はやっぱり、作業がものすごく多いという現実があります。手書きで絵を1枚描くのに何時間かかるんだという作業がありますし、幼い命なのでいつも緊張は抜けない。保護者との関係もある。最近は「年長者とどんなことを喋ったらいいか分からない」という悩みや、いろんな精神的なきつさを抱える保育士もいる。IT化もそうですが、保育人材への研修など、ぜひ行政と一緒になって底上げしていくことが必要ですね。

次ページシッターは期待している面もあるし、不安な面もある
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