保育園、親のホンネは中身だって重視したい

「質の高い保育」は、どうすれば実現できるか

井上竜:ベビーシッターは期待している面もあるし、不安な面もある。シッター1500人分を用意するというけど、東京都は発表しているだけで8000人の待機児童がいる。それで足りるのかという問題もある。ただ、今は働いていないけど、フルタイムでなくて5~6時間ならベビーシッターで復職しようという人材を、どれだけ掘り起こせるかにかかっていると思う。

復職しようという人材を、どれだけ掘り起こせるかにかかっている(写真:ハフポスト編集部)

井上正:保育所で働く人材がベビーシッターに移ったのでは全然、問題の解消にならない。今回の制度を契機にいかに保育人材を掘り起こすか。それをセットにして考えないといけないですね。

後藤:やり方によっては大きな可能性もあるでしょう。ただ、実は認可保育所に入れなかったからベビーシッターを利用している方って、世田谷区では意外と少ないんですよ。一桁ぐらいしかいない。なぜそうなのかの分析はまだできていないんですけど、日本にベビーシッター制度がまだなじんでいないのもあるのかもしれない。

夕方2時間だけでも助かる

――世田谷区は実施予定なんですか?

後藤:そういうこともあって、今のところ事業認可の主体が東京都にあるということと、実態として利用があまりなさそうだという判断もあります。事業者の安全をチェックする仕組みが世田谷区としてできていないことは大きいと思っていて、補助の活用は今のところ考えていないです。

泉谷:あれ、なんか希望がなくなってきました(苦笑)

井上竜:去年の春からシッターさんに、夕方2時間だけ週2回来てもらっています。最初は家に入れるのにすごい抵抗があったけど、来てもらうとすごく助かる。心理的なハードルや、今の利用状況もありますけど、こういう制度があったら利用したいという潜在的な需要もあると思う。

井上正:補助金が出て認可保育所並みの負担で済むとなれば、利用者は増えるのでは。

泉谷:今、利用者がいないからといって、導入を諦めないでほしいんですが……。

後藤:まさに考えるきっかけを東京都さんから与えていただいているという気がします。

泉谷:文化が根付いていないというのは確かにそうで、一般的には、ベビーシッターに家で一人で子どもをみてもらうのに抵抗がない人はまだまだ少数派。安全性もありますが、知らない人が家に来るのは嫌だという感覚でしょう。

井上竜:それもあるし、知り合いや自分の親に「じゃあなんで働くの。奥さんがみればいいじゃない」という方も根強くいますよね。

――泉谷さんはシンガポールに在住経験があるんですよね。

シンガポールや香港などでメイドとして働くにあたり、保育の実習を受ける、インドネシアの女性たち(写真:ハフポスト編集部)

泉谷:2年前に帰国するまで3年間、夫の仕事の関係でシンガポールに住んでいて、外国人の家事労働者、主にフィリピンやインドネシアから働きに来ている人の支援をするNGOの職員をしていました。シンガポールでは、かなりの家庭で住み込みの家政婦さん(メイド)を雇っていて、特に子育て世代や介護をしている世代には一般的なんですね。

産休・育休制度は日本より充実していませんが、お母さんはその分働けるし、社会的な負い目もない。「他人に家事をやらせるな」という社会的な圧力がない。シンガポールも数十年前に「女性は働きなさい。家事は外国人に任せて」というキャンペーンを政府がやったんですよ。女性を労働市場に送り出し、経済発展の礎になった成功事例と政府は考えています。

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