保育園、親のホンネは中身だって重視したい

「質の高い保育」は、どうすれば実現できるか

井上正:待機児童は、我々保育事業者の立場からも切実な問題です。質の高い保育所を一つでも多く造っていきたいんですけど、保育士不足などいろんなボトルネックで、検討段階からあきらめざるをえない状況にある。我々は育児コンシェルジュというサービスがありまして、企業様と契約をして、子育て全般のお悩み相談から保育所探しのお手伝いもしています。その中で、弊社の認証保育所に入りたいといったご相談があっても、ものすごい人気で、何十人待ち、下手すれば100人待ち。なかなかご期待に応えられず忸怩たる思いでいるというのが現状です。

規制緩和めぐる、国と自治体の違いも表面化

――待機児童解消が国の政策目標になって、国と地方自治体との意見の違いも表面化しています。最近では自治体が国の基準より厳しく設定した保育士の定員や面積基準を巡って、国が緩めるよう求める動きも出始めました(※)。

※認可保育園の保育士の配置や保育スペースは国が基準を設けているが、世田谷区など多くの自治体が国を上回る独自の基準を設定している。たとえば保育士1人がみる子どもの基準は、1歳児の場合、国が6人に対し、世田谷区などは5人。待機児童の解消を求める国は、こうした自治体に国の基準に合わせるよう要請しているが、ほとんどの自治体が応じていない。

後藤:国の規制改革推進会議からも、保育定員や面積基準の緩和を求められています。実は、同じような話が2年前に一度議論になったことがあって、国の方から基準緩和を検討してほしいと、全国の自治体に投げかけたんですね。しかしその意見に賛同して緩和した自治体はほとんどなかった。その流れは今も変わっていないどころか、数が増えれば増えるほど、質の重要性は、より高まっていると感じています。

定員にしても面積にしても、保育の質、子どもの安全が一番大事なところですので、世田谷区はそこを守り続けながら、保育定員を増やす。質との両立をやっぱり考えていかないといけない。そこはどんな状況になっても変わらないですね。

国の方も、基準を緩和してどんどん詰め込んで待機児童を解消しろ、と言っているわけではなく、現場のちょっとした工夫で乗り切れるのであればやってもらって、実現できないハードルがあるのであれば取り除くという趣旨で言っているんでしょうが、結論だけドーンとダイレクトに来るもんですから。趣旨を分かりやすく説明していただいて、日本全国でやっていきましょうといった施策の進め方が伝わってくれば、雰囲気も変わると思うんですが。

――事業者として現場を見ていると、基準の話はいろいろお感じになることも多いと思いますが。

井上正:これは緊急避難的にご検討いただきたいことなんですが、1歳児に対する保育士の配置基準が、国基準は保育士1人に対して1歳児6人ですが、世田谷区は1人に対して5人なんです。現場の運営上、お昼ごはんやお散歩のときなどは国基準だけでは回らないので、補助要員として子育てサポーターという人がついていますが、世田谷区の認可保育所の場合、この補助要員にあたる部分も保育資格者を配置することが必要となります。

保育所はだいたい13時間開いているので、保育士のシフトを組まないといけないんですけど、そこで資格にこだわると、保育士不足の中では結局、長時間労働でしのぐしかなくなって、疲弊し、辞めていって、ますます保育士不足になる。確かに本当に必要な時間はきちんと保育士を配置する必要があるんですけど、業務によっては保育士資格のない人が代替してもいい部分もあるはずなんですね。安全性を確保した上で見直しの議論ができると非常にありがたいです。

後藤:まさにそういう部分を全国的に議論して展開していただきたい。誰でもいいんだということではなく、きっちり制度設計がされた上での考えであれば、それはありうると思いますね。

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