首相が狙う憲法改正に待ち受ける公明党の壁 公明は2019年参院選終了まで議論したくない

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公明党はもともと、憲法については新たな項目を加える「加憲」の立場。太田昭宏元代表らも、自衛隊について9条に書き加える案は公明党内の理解が得られると安倍首相に説明してきた。

しかし、現在の山口那津男代表はもともと、憲法改正に慎重だ。「今の政治は、憲法改正より社会保障や教育など現実的な課題にエネルギーを注ぐべきだ」というのが持論。加えて、山口氏は最近の国政選挙の遊説などを通じて、公明党の支持母体である創価学会の婦人部から強く支持されている。山口氏の演説会場では、婦人部メンバーの「なっちゃん」コールが響き渡る。もともと婦人部では憲法改正に慎重論が強く、その影響が公明党に及んでいる。

こうした事情を踏まえて、安倍首相に近い政府高官は最近、憲法問題についてこう話した。「公明党は、2019年春の統一地方選と夏の参院選まで憲法論議は進めたくないのが本音だ。そうである以上、政権としても憲法改正を強引に進めるわけにはいかない」。

公明党の協力が見込めないと、党内論議もしぼむ

第2の壁である公明党の協力が見込めないという事情は、第1の壁の自民党内論議に跳ね返ってくる。「公明党が乗ってこないなら、自民党内の議論を進めても意味がない」(自民党憲法改正推進本部の有力メンバー)というわけだ。

立憲民主党など野党は、憲法は権力を縛るという「立憲主義」について安倍政権のスタンスが明確になっていないと問題提起を続けている。本格的な改憲論議に入るには程遠い状況だ。その後には国民投票での過半数の賛成という高い壁が待ち受けている。英国のEU(欧州連合)残留を問うた国民投票が否決され、当時のキャメロン政権が倒れたように、憲法改正国民投票は安倍政権の存続可否に直結する。

第2、第3、第4の壁の困難さを考え、自民党内の議論が失速してくるのか。それとも安倍首相がネジを巻いて議論を加速させるのか。政権の帰趨にも直結する憲法論議は、最初の山場を迎えつつある。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)など。

 

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