安倍首相の目指すものが「改革」から「革命」へ

首相発言に見る言葉の「インフレ」

それが一変したのが1990年代後半あたりからだ。歴代首相の施政方針演説や所信表明演説に「改革」という言葉がどのくらい登場するか調べてみた。政策通を「売り」にして、行政改革、経済構造改革、金融システム改革など6つの改革を掲げた橋本龍太郎首相は、演説のたびに30回以上「改革」という言葉を使い、最多は42回だった。跡を継いだ小渕恵三首相は対照的に毎回十数回程度しか言及していない。

そして「自民党をぶっ壊す」と従来の自民党政治の否定を打ち出した小泉純一郎首相は「改革」一色だった。「郵政改革」「三位一体改革」など代表的な政策だけでなく、「聖域なき構造改革」「構造改革なくして日本の再生と未来はない」「改革の痛み」「国民の支持なくして改革は実行できない」などと「改革」の意味づけや目的などを熱心に説いている。言及した回数は毎回30回前後で、最多は54回に上った。

小泉首相に比べると安倍首相の「改革」の言及頻度はさほど高くない。それでも第2次政権になってからは毎回、10回から20回ほどは言及している。最も多かったのは2015年2月の施政方針演説で37回だった。小泉首相と比べた場合の安倍首相の演説の特徴は、最重要課題だけでなく、細かな政策にまでことごとく「改革」をつけている点だろう。具体的には「農協改革」「電力システム改革」「水産業改革」「林業改革」「大学改革」などなど、改革のオンパレードである。

「見直し」とか「対策」などという言葉に置き換えてもいいような個別具体的な政策にも「改革」という名前がつけられているのが近年の首相演説の特徴だろう。

濫造された「改革」が達成されず、たまっていく

これだけ数多くの改革が登場すると、1つひとつの改革がどう進展しているか、チェックのしようもなくなる。掲げた改革が実現できないときは首相のクビが飛ぶなんてことはとっくの昔の話で、今や改革濫造の時代となった。濫造された改革は達成されないまま次の政権に引き継がれていく。お荷物となった改革が手つかずのままたまっていき、首相の演説で列挙されているともいえる。

こうした変化の背景には、政党が安定的な支持基盤を持つ時代が終わり、無党派層が多数を占める時代になったということがあるだろう。首相や党首のイメージが支持率に大きく影響するだけに、国民に強く伝わる言葉、いい印象を与える言葉が重視されるようになってきた。それが言葉のインフレーションを引き起こしているのだ。

しかし、ここまで「改革」が濫造されると、聞くほうにとっても新鮮さがなくなってしまい、当たり前の言葉になってしまう。より刺激的な言葉として「革命」が登場するのは必然的なことかもしれない。

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