こうして積極的に動いた結果、3人と「交際」に入った。ところが、3人とも3回の食事の壁が越えられずに、女性からお断りされてしまった。その断られた理由が彼にとっては理不尽で納得できず、前出の言葉につながった。
「質問ばかりされ、尋問のようで苦痛だった」
最初にお付き合いしていたのが、会社員の安西麻巳子(41歳、仮名)だった。交際に入った当初の経過報告を聞くと、極めて順調そうだった。
「毎日メールのやり取りをしていますよ。電話も週に2回くらいしています。一度電話すると1、2時間は話していますよ」
ところが、3回目の食事を終えたところで、突然の“交際終了”が相談室から入ってきた。
則雄からは、「昨日のデートも楽しく会話できました」と聞いていたので、 “交際終了”の理由はなんなのか、彼に“お断り”が来たことを伝える前に、相談室に問い合わせた。
すると、相談室の仲人からこんなことを言われた。
「内田さまの電話は毎回長くて、なかなか切ろうとしない。その中で執拗にいろいろな質問をされて、安西はそれがつらかったようです」
その夜、則雄に“交際終了”が来たことと“お断り”の理由を電話で伝えた。すると彼は、あきれたような声を出した。
「えーっ、なんですか、その理由! 確かに電話をかけていたのは、僕ですよ。彼女からかかってきたことはない。でも、執拗にいろんな質問されたって? それを言われるのは心外だな。電話では彼女が7割方しゃべって、僕が話をしていたのは3割程度だったと思いますよ」
則雄の言い分はこうだった。
「電話をすると、彼女はその日に会社であった出来事を、堰を切ったように話し出すんですよ。そのほとんどが、会社の人たちの愚痴。『私が休憩に入ろうとしたら、何々さんが仕事を頼んできた』とか。『斜め前に座っている何々さんは、書類を製作してもミスが多いから、私の仕事量が増える』とか」
則雄は、恋愛本によく書いてある“女性の話は聞いてあげることが大事です”という言葉を思い出し、「ふんふん、そうなんだ」「それは大変だね」と、ひたすら聞き役に回るようにしていたという。
「でも、僕は安西さんの会社の人たちのことはまったく知らないから、話を聞いても顔が浮かばないし、ちんぷんかんぷん。そもそも愚痴って聞いても楽しくない。だから、話の切れ目で、『ところで、プロフィールに旅行が好きって書いてあったけれど、最近はどこに行きましたか?』とか聞くわけですよ。そうすると、『先月の連休に友達と箱根の温泉に行きましたよ』『へぇ、何人で行ったの?』『女3人で。そういえば、この間、富士急ハイランドに会社の同僚の男女2対2で行ったんですね。そうしたら、その中の男性1人が、4人で一緒に撮った写真を会社でみんなに見せて回っているんですよ。それがもうすっごく嫌で』って、会社の人の愚痴話がまた始まるんです」
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