かつて私はテクノロジーについて明るい展望を持っていた。よりすぐりの米シリコンバレー企業に投資してきたのが、私の35年に及ぶキャリアだ。初期のグーグル、アマゾンに投資し、2006年から10年にかけてフェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏の指南役となったことは、私の仕事人生のハイライトである。
コンピュータやインターネットの世界で新たな波が起きるたびに、生産性は高まり、情報へのアクセスは簡単になった。テクノロジーはグローバル化と経済成長を牽引し、ここ数十年で世の中を一段と便利なものにしてくれた。
2つの暗黒面が露呈
だが、2016年になると2つの暗黒面が露呈した。1つは、利用者に関するものだ。規制がほとんど存在しないのをいいことに、フェイスブックやグーグル、アマゾンといったハイテク企業は、プロパガンダ活動やカジノ同様のテクニックを用い、利用者を依存症にしてきた。絶え間なく現れる通知や、「いいね!」の獲得を競わせるような仕掛けなどによってである。
暗黒面のもう1つは、政治的なものだ。ネット上のプラットフォーム──とりわけフェイスブック──によって政治、外交、ビジネスの強者は、弱者に付け入ることができるようになった。欧米各国の選挙において繰り返し明らかになったのは、ソーシャルメディアのアルゴリズムは民主主義を切り崩す目的で悪用されることがある、ということだ。欧州連合(EU)離脱をめぐって行われた英国の国民投票や2016年の米国大統領選挙などが、そうした例である。
抑圧的な政策に対して国民の支持を促す目的で独裁政権がフェイスブックを利用することもある。実際、いくつかのケースで、フェイスブックは大口顧客と同様のサポートを独裁政権に与えている。
フェイスブックやグーグルといった巨大プラットフォーム企業の創業者に悪意はなかった、と私は信じている。彼らは若く、成功に飢えた起業家だったにすぎない。
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