大江千里、47歳で始めた僕の「ライフ・シフト」 米国での活動から小室さんの引退までを語る
――昨日ちょうど、小室哲哉さんが記者会見で引退を発表しました(注・インタビューは1月20日に実施)。会見のきっかけになった出来事は脇に置くとして、60歳を目前にした小室さんが、周囲の期待に応える音楽を作ることに深く悩んできた姿が印象的でした。
見ました。僕、てっちゃんとお友達だから。てっちゃんがその決断をしたことは、非常に勇気のあることだと思います。ただ、早いなとは思う。
今は人生100年の時代です。才能だって、そんなに簡単に枯渇なんかしない。もし枯渇したと思ったなら、それは休めばいい。2~3年のバケーションをもらって、まったく違うところで人生を立て直すことはできる。もしスキルアップする時間が十分にあったら、今度は何が出てくるだろう?って、自分にわくわくできると思うんです。
肝炎のような身体的な問題があったのも、やっぱり休養が足りなかったのかなあ、と思ってしまう。ゆっくり休んで、ワインを飲んで、翌日起きて、「今日も生きてて、こうやってぱちっと目が開いた。何だってできるよね、恥なんて捨てて!とりあえず犬の散歩に行きますかね」っていう感じになれば、もう一度わくわくしてくる。
現実世界には、たとえばてっちゃんの音楽にダメ出しをするディレクターやプロデューサーがいたのかもしれない。「音域はここから出ちゃだめ」「その転調はもっと変えてください」と言われたり、自分が美しいと信じてきて、こういう曲ならそんなに歌唱力がないアーティストでも輝かせられると信じているものを否定されたり。
いや、実際は知らないですよ。わからない。だけどそういうことで人間は疲弊するもの。そしてその回数が増えてくると、あれだけエネルギーのある人でも、もうそろそろ潮時なのかなっていう発想にもなってしまうのかもしれない。
最高の仲間が1人いればいい
てっちゃんは今でも金髪がよく似合っていて、ハンサムです。だけどやっぱり、60歳手前の顔をしている。てっちゃんはにっこり笑うとかわいいんですよ。それなのに笑わないで、悲しさや苦渋をかみしめた顔をしていると、見てるほうも本当につらい。せっかくここまで人生を生きてきたのだから、少し休んでいい。
人生って、時々休んで思い切り羽を伸ばせて、話を聞いてくれる最高な仲間が1人でもいたら、十分なんとかやっていける。たくさんの人に囲まれていなくても、高級車で移動しなくてもいい。電車で移動したほうがむしろ、そこでどんな出会いがあるか、何が始まるかわかりません。
――千里さんは実際、企業社会でいうサバティカル(長期勤務者に対する長期休暇)を取るようにして米国に留学しました。その時に、「これをやってしまったら、戻ったときに自分の居場所はもうないんじゃないか」とは思わなかったですか。
思いましたね。もう戻らないと決めて出ましたが、万が一戻らざるをえないこともあるかもしれない。その時に席がなかったら、それは仕方がない。その時はその時で「次のドア」を開けていこうと、おぼろげながらも覚悟をしました。
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