別の日に多摩川の河川敷で取材をしていると、野宿生活者の一人から不穏な話を耳にした。その人も猫を飼っているのだが、遊びに出かけたきり帰ってこないという。
「もう3日くらい帰ってこないんだよ。無事だったらいいんだけどさあ。よく殺されるんだよ」
“殺される”とは穏やかではない。文字どおり猫が殺害されるという意味なのだろうか?
猫を殺しにくる人がいる
「猫を殺しにくる人はよくいるよ。よく見かけるのはあるお爺さんなんだけど、ゴルフクラブを持ってしょっちゅう猫を追いかけ回して、叩き殺してる。やめてって言いたいけど、武器持ってるし怖くて言えないよね。
あとは、エサ箱に毒をまいていく人がいる。農薬なのか殺鼠剤なのかはわからないけど、エサを食べた猫はパタパタ死んじゃう。ウワサではおばちゃんらしいんだけど、ホントにやめてほしいよね」
あまりに怖い話でしばし言葉を失ってしまった。その後多摩川を取材している時、猫を追いかけるお爺さんの話はしばしば耳にした。
また、『毒をまかないでください』と書かれた手書きの看板もあった。どうやら、本当に猫を殺している人たちはいるらしい。
野良猫は“糞害”や“ゴミを荒らす”などの問題があるのはわかる。それにしたって、わざわざ殺さなくたっていいのに、と思う。
猫が亡くなった後、お墓を建てて線香を上げお供え物をしている野宿生活者もいた。
「自分たちは多分ちゃんとお墓には入れてもらえないけど、せめて猫には天国に行ってほしいからね」
と、小さい声で話した。
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