猫とホームレスが織りなす何とも柔和な共生 捨て猫でも野良猫でも彼らには生きがいだ

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別の日に多摩川の河川敷で取材をしていると、野宿生活者の一人から不穏な話を耳にした。その人も猫を飼っているのだが、遊びに出かけたきり帰ってこないという。

「もう3日くらい帰ってこないんだよ。無事だったらいいんだけどさあ。よく殺されるんだよ」

“殺される”とは穏やかではない。文字どおり猫が殺害されるという意味なのだろうか?

猫を殺しにくる人がいる

お墓を建てて線香を上げお供え物をしている野宿生活者もいる(写真:筆者提供)

「猫を殺しにくる人はよくいるよ。よく見かけるのはあるお爺さんなんだけど、ゴルフクラブを持ってしょっちゅう猫を追いかけ回して、叩き殺してる。やめてって言いたいけど、武器持ってるし怖くて言えないよね。

あとは、エサ箱に毒をまいていく人がいる。農薬なのか殺鼠剤なのかはわからないけど、エサを食べた猫はパタパタ死んじゃう。ウワサではおばちゃんらしいんだけど、ホントにやめてほしいよね」

あまりに怖い話でしばし言葉を失ってしまった。その後多摩川を取材している時、猫を追いかけるお爺さんの話はしばしば耳にした。

また、『毒をまかないでください』と書かれた手書きの看板もあった。どうやら、本当に猫を殺している人たちはいるらしい。

野良猫は“糞害”や“ゴミを荒らす”などの問題があるのはわかる。それにしたって、わざわざ殺さなくたっていいのに、と思う。

猫が亡くなった後、お墓を建てて線香を上げお供え物をしている野宿生活者もいた。

「自分たちは多分ちゃんとお墓には入れてもらえないけど、せめて猫には天国に行ってほしいからね」

と、小さい声で話した。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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