猫とホームレスが織りなす何とも柔和な共生 捨て猫でも野良猫でも彼らには生きがいだ

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おそらく近所に住んでいる人が、

猫小屋(写真:筆者提供)

「あそこにいるホームレスは猫を飼っているから、うちの猫を置いていっても育ててもらえるだろう」

と思ってテントの中に捨てていったのではないか、と爺さんは推測する。

「コイツやんちゃだし、手に負えなくなって捨てられたんだろうな。ここに来て半年くらいになるけど、生まれも年齢もわからないなあ。

コイツがなつくヤツがいたら、そいつが犯人なんじゃないか?って思って毎日見てるんだけど、誰にもなつかねえ。もう元の飼い主なんて忘れちゃってるのかな(笑)」

上野恩賜公園の周りではボランティア団体が野良猫の去勢手術をしたりして、野良猫の数は減少傾向にあるそうだ。

ただ、新たに猫を捨てる人は後を絶たないという。

猫好きを中心にコミュニティーが出来ている

「あら、今日リュウは来てないの?」

と女性の声がした。見ると上野動物園の職員の女性だった。

「リュウは今お出かけしてるね。今日はミミが泊まりに来てるんだよ。でもミミがテントに入ってくるとトラが怒っちゃって大変なんだ」

「後から来たのに、先輩の猫に怒るなんてトラはダメねえ」

と笑いながら言う。目の前でグーグーと眠るぽて猫の名前がトラらしい。

テントの中で、激しい縄張り争いが繰り広げられているようだ。

背後に自転車のブレーキ音が聞こえる。振り向くと、背広姿の男性がニコニコ笑いながら自転車を降りてくる。

「今日も来ちゃいました!!」

というと、

「トラ~!! トラ~!!」

と、ワシャワシャとトラの頭をなで回した。トラは迷惑そうな顔で目を開けたが、またすぐに眠ってしまった。

男性は会社からの帰宅途中、いつも立ち寄って猫にエサをあげたり、なで回したりするという。

お爺さんは他の野宿生活者とは交流しないと言った。人嫌いではないのだが、お酒をたかられたり、酔って絡まれたりするのが面倒くさいという。

ただお爺さんの周りでは猫好きを中心にコミュニティーが出来ていたし、何よりこんなに猫に愛されていたら寂しくないだろうなと思った。

立ち去る時に、

「今度何か差し入れしましょうか?」

と聞いてみる。

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